1月8日 寝坊したため久しぶりに車で登校。
ほぼ同じ内容を教えている教養科目「市場経済」と宮城学院女子大「経済社会特論」の,残り2回分の講義案を練る。
予定通りだと,非正規雇用,格差をそれぞれ1回となるが,どちらも1回では話しきれない。また両者は相互に関連しているが,独自の部分(格差には階層間格差もあれば,地域格差もある)もある。
結局,教養科目なので,両者のズレや細かい点は無視して非正規雇用を2回に割って解説することにした。1回目はその実態を,偽装請負や日雇い派遣問題までは踏み込まず,なるべくデータやエピソードを用いて詳しく具体的に解説する。2回目は,1回目に対する学生の質問に答えつつ,非正規問題発生の背景について解説する。労働者派遣法の成立(1985年)やその改正(1999年以降)についての解説が中心となる。格差問題の再発はこの間の規制緩和と軌を一にしているからだ。
しかし,格差の深淵はもっと別の所にある。授業で解説してきた各種社会保険は非正規雇用を補集合の一部のように位置づけている。たとえば年金では会社員,公務員が第2号被保険者であるのに対して,非正規雇用は自営業者や学生,無業者と同様に第1号被保険者だ(第1号の定義は第2号,第3号(勤め人の専業主婦)の補集合)。つまり正社員中心である。講義では扱わなかったが雇用保険,生活保護もそうである。短期就労者は雇用保険の加入資格を満たさない。生活保護の受給者の4割が高齢者世帯,同じく4割が障害者世帯,1割が母子家庭世帯であり,就業可能な物,失業者を相手にしていない。いわば正社員中心の完全雇用型モデルで,働かないのは本人の問題であるかの如くである。
前回扱った内部労働市場もそうである。雇用調整は非正規雇用からが不文律になっている。賃金も企業横断的な制度が確立していないため,雇用形態による格差が忍び込みやすい。また労働組合もそうである。非正規雇用にはボーナスが出ない,というエピソードを良く聴くが,ボーナスも賃金の一部であるとは言え,月給のように全員に払わなければならないわけではない。にもかかわらず正社員には必ずボーナスが払われているのは,慣例としてであるが,それを慣例化した労働組合の力による。しかし,非正規雇用は労働組合が対象にして来なかった。だからボーナスを必ず支払うという慣例の外にあった。
つまり,格差の深淵には,賃金制度も社会保障制度も労働組合も男性正社員中心,女性は家計補助的労働者というモデルがある。
しかし,これらの点に最終回でどこまで触れられるかは心許ない。相当の工夫が必要だ。
夕方,来週開催の学部教育委員会打合せ。終了後,「5km先はチェーン規制です」とのナビ音声をおっかなびっくり聴きながら286号線を東上。
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