2023年7月21日金曜日

問題は広がった

 練っている最中のことを記すのは難しい。

 秋の学会で報告予定の報告「特別剰余価値の超過利潤への統合について」は,最近の経済原論の概説書における両概念の統合傾向を題材にして経済原論三篇構成についての再検討を問題提起しようというものであった。
 統合傾向の背後に,剰余価値論の余剰論への組替え論と生産論の設定である「代表単数とwしての資本」の2つに求め,生産論の視角や同質的な資本設定(代表単数)の是非を問おうとしていた。

 しかし,方法論的なアプローチでは抽象的すぎる,と具体的論点を取り上げようと試みた。

 最近のt学会誌に載っていた,「流通過程の不確定性」を根拠にした流通費用の費用価格からの控除問題である。

 山口原論では,「流通過程の不確定性」は生産論で価値形成労働を抽出する際に1つのメルクマールとして用いられており,価値論レベルの疑念であって,諸資本が相互に競争する際の基準とされる利潤率や費用価格の設定に直接援用することに疑問を感じていたからだ。

 しかし,「流通過程の不確定性」概念は,小幡原論では正に機構論で始めて説かれており,生産論では帰りみっれていない。それどころか,資本の流通過程も生産論では扱われていない。

 すると,先の統合論の問題は,剰余価値論の余剰論への組替えに止まらないことになる。
 生産論で扱われる社会的再生産,資本による社会的再生産の包摂とは生産過程論だけになる(生産論第3章は蓄積論であるモノの,そこでは資本蓄積の展開は論じられず,資本構成,蓄積率の定義が与えられているだけだ)。
 
 問題は剰余価値ないし純生産物(剰余価値+労働力商品の価値)の扱い方ばかりではなく,資本による社会的再生産包摂の理解,説き方まで広がったことになる。
 あるいは,元に戻って,総資本と賃労働による新生産物の取得と分配という階級視点の論述だけで資本制経済における社会的再生産を説いたことになるのか,ということになる。
(以下次回)