2019年5月19日日曜日

推測に過ぎないが

 更新し忘れたため「1週間も前のことになるが,5月12日(日)の午後,橋本健二『アンダークラス』(ちくま新書, 2018)を読んだ。
 行きつけのカフェは書店と隣り合わせなので,カフェで今後の構想を練っているときに急遽思い立って購入。
 氏の論稿は,ここでも触れたように,『新・日本の階級社会』(講談社現代新書, 2018)も同年秋の経済理論学会全国対価8位での共通論題報告予稿集も読んでいたが,前掲書では,アンダークラス(氏の基準では非正規雇用からパート主婦を除いた900余万人)をさらに4つに区分して論じているので,興味深かった。すなわち,59歳以下男性,59歳以下女性,60歳以上男性,60歳以上女性。性別と年金受給年齢による区分である。
 そのため,
アンダークラスの約半数は60歳以上であること,
 しかし,60歳以上のアンダークラスは,貧困率が日本全体の平均値を少し上回る程度であること,
 他方,アンダークラスの3割弱を占める59歳以下の女性は貧困率が56.1%と著しく高いこと,
 同約4分の1を占める59歳以下の男性も貧困率が28%台と高いこと
がわかった。

 すると,労働者階級のなかでも特異なアンダークラス900万と言っても,本当に貧困率が高いのはその3割,59歳以下の女性ということにならないだろうか。
 ではその原因は,私が図表データから推測するところ,賃金が比較的低いサービス職が多く比較的高いマニュアル職が少ないこと,(アンダークラスからパート主婦を除いているため)全員独身であること(未婚56.1%,離死別43.9%),さらに性別賃金格差であろう。
  ではなぜこれらの独身女性が低賃金職種に就くかというと,さらに大胆な推測になるが,高卒(彼女らの66%が高卒)の正規雇用職が減ったということではないか(ある文献によれば,事務職が大卒にシフトした)。
 原因論は推測に過ぎないので,なお検討の余地がある。




2019年5月12日日曜日

同じテーマでも焦点の違い

 特集論文の紹介原稿をたずさえたままGW旅行に出掛けたが,編集する時間はほとんどなかった。その中でもWEB上でTexファイルのコンパイル作業を提供してくれるサービスには助かった。スマホで綴ったTex原稿の診察状態をPDFで取得確認できるからだ。
 
 でも編集は初日の待ち時間だけで,加賀・山代温泉,輪島朝市,金沢兼六園に21世紀美術館と回った。金沢市は人出が多く,美日間では入館にも人気のある展示室入場でも1時間以上待つことになった。

 そのため,戻ってきてから編集を続けたが,軸を置き換えるばかりで,内容はほとんど買わない状態になったので,締切り前のに筆を置くことにした。以下,その末尾部分。
以上4篇の論文によって,賃労働内部でもまたそれを支える家庭内の労働との関係でも多層化したこんにちの労働の一端が浮かび上がったのではないだろうか。また,47巻3号(2010年10月)の「労働論の現代的位相」以来9年ぶりに労働に焦点を当てた本企画を,本誌前号に掲載された昨年の全国大会共通論題「転換する資本主義と政治経済学の射程―リーマンショック10年」の諸報告と比べて欲しい。後者は対象を家計自立型非正規雇用と限定正社員から成る「一般労働者階層」,あるいは非正規雇用からパート主婦を除いた「アンダークラス」に絞り,労働力の再生産が危機に瀕していると訴えている。他方,本企画では,貧困に止まらない問題を浮かび上がらせるために,労働自体が多層化している面に焦点を当てようとした。併せて読み,比較しながらこんにちの労働の諸相と課題を検討して欲しい。

20数年ぶりの金沢。フォーラス6階から眺めた金沢駅。









金沢駅正面

白米千枚田










21世紀美術館。レアンドロのスイミング・プール



 兼六園では徽軫灯籠(ことじとうろう)と芭蕉の俳句碑「あかあかと日は難面(つれなく)も秋の風」(1689)