2019年2月10日日曜日

一進一退

 前回,原稿の練りが甘いのが露見したと恥も外聞もなく綴った二校は,最小限の補正を施して締切り前,先月のうちに返却し,一昨日三校が届いた。
この間,ある科目の採点が難渋した。
 答案を通して読んでみて,採点のブレの補正に移る段階で,種々業務が入り中断。
 結局,試験実施から成績入力までに3週間も掛かった。
 今回も校了となる三校と同時に,種々の業務が入ってきているが,こちらは締切りに未だ余裕がある。

 そこで,以前から気になっていた格差・貧困問題を考えてみた。
 要は,貧困問題は重要だが,理論的にどのように扱うかよくよく考える必要があるということ。

・事実としての貧困,格差の指摘を繰り返すだけでは理論的には発展がない。
 絶対に否定できない貧困はあたかもそれが結論,指摘すれば終わりのようになりがちであるが,それでは理論的に新たな解明をしたとは言えない。
 資本主義経済の発展との関係を明らかにする必要がある。
 それも耳にする「新自由主義の影響で」「労働者派遣法の成立により」では,それ自体間違っているわけではないが,浅い分析に終わる。
1.「労働市場に二重構造」は派遣法によって発生したのではなく,以前から指摘されていたこと。
 派遣労働者の数は非正規雇用全体の中では多くないが,派遣法の成立と改正により非正規雇用比率が上昇したのは間違いない。しかし,ジニ係数,相対的貧困率の推移を見ると,戦後に限っても派遣法成立以前に現在よりもっと高かった時期がある。
 とすれば,格差の発生,拡大という指摘に止めず,その現れ方の変化を指摘すべきではないか。例えば,以前は直接雇用と間接雇用(請負労働)という正規雇用間の格差が直接雇用内の正規,非正規に転換したと言えないか。とすればその要因は。
2.貧困を問題にする場合,対象を特定する問題もある(賃金労働者全員,非正規全員が即貧困というわけではないから.貧困の定義を緩めれば別だがそうすると使えない定義となる)。
 端的に言えば,高齢単身世帯及び母子家庭。
 前者は高齢化時代の定年後の生活保障(高齢者雇用と年金等)の問題,後者は高い女性就業率時代の生活保障,あるいはその前の賃金格差, あるいはさらにその前の出産退社(非正規雇用としての労働市場復帰)

 いずれも労使関係という経済原論的な視点だけではすくい取れない。高齢化の進展,共稼ぎ時代という視角を1,2枚噛ます必要がある。