1月2日 居間では食べては寝るでジム経由でファミレス。
吉田修一『
春,バーニーズで』(文藝春秋,2004年)。タイトルから軽めの風俗小説かと想像していたら,まったく逆。若い頃ゲイバーのママと同棲し養われていた30代の男性が子持ち女性と結婚し妻の実家に義母とともに暮らしているという設定はほぼ踏襲されているが,文芸誌に断続的に発表された5編の独立の小説。夫婦関係が悪いわけではない。仕事で著しい問題を抱えているわけではない。しかし,現代人はさまざまな人間関係の中でストレスを抱えている。「ふとしたはずみに,もう一つの時間へ」(帯に記された惹句)という想いは誰にでもある。ポイントは「もう一つの時間」の描写ではなく,そこに至る経緯,プロセスの描写だと思われるが,純文学的お作法なのか,なぜ「もう一つの時間」なのかという具体的な描写が乏しく,腑に落ちなかった。『
初恋温泉』(集英社文庫,2009年)。こちらはいわゆる大衆文芸誌に断続的に載せられた大衆小説。5つの物語で,離婚話が持ち上がっている夫婦が,不倫カップルが,おしゃべり好き同士の夫婦が,職業上の圧列が夫婦関係に及んだ夫が,高校生カップルが温泉地に赴くかが,決してメロドラマ仕立てではなく,つまり冗長にならずに,過不足なく描かれている。作家吉田修一の特長はこちらの物語巧者の方にあるのではないか。予定通り吉田修一尽くしで終わった正月。唯一の不満は残った1冊『
7月24日通り』が1年半前に文庫本で読んでいたということ^^;。
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