2010年1月5日火曜日

景気動向・その1

 毎年依頼を受けている春闘パンフレット用の「経済指標の解説」のため,4日は早朝登校して,日本経済全体に対する,官公庁の資料及び解説を読みあさってみた。
 普段,専ら理論研究を行なっているので,リアルタイムのデータに触れるまたとない機会だ。
 
 実際の指標に当たってみて,巷間言われるほど悲観的データばかりではないことがわかった。
 確かに全国的な状況を見ると,消費者物価総合指数は前月比で1年以上下落を続け,四半期毎の企業収益は前年同期比で減少を続けながらも,家計支出が対前年同月比で3ヶ月連続して増加していたり,アジア向けを中心とした輸出の増加から鉱工業生産指数における生産及び出荷は9ヶ月連続の増加を示していたりと,回復の足取りを確認することが出来た。その意味で12月『月例報告』の「景気が持ち直している」との判断はあながち誇張されているわけではない。しかし,同時に,就業者は22か月連続で減り続け完全失業者も13か月連続で増加を続けるなど雇用情勢が依然厳しく,現金給与総額が減少を続ける中では,家計支出と輸出便りの景気回復は「自律性に乏し」いと政府自らが認めざるを得ない状況である。

 こうした状況では,財政による下支えと一層の金融緩和が求められてくる。
 問題は財政出動の中味であろう。
 旧来型の公共事業中心では,財源の終了と同時に,景気に下向く。手当等の給付は,所得再分配や子育て支援など社会政策的な意味があるものの,乗数効果だけでみれば,公共事業を遙かに下回る。(公共事業で1ちょっと,給付は貯蓄に廻ることもありその半分くらいと言われている)

 最近の若者は地元志向が強い。しかし,地元には仕事がない。やむなく大学所在地の都会に残ったり,都会に出て行っている。そこで地方への事業誘致や公共事業が求められるわけであるが,上記のように財政出動は「景気の呼び水」に過ぎない。財政出動の間に新事業,新産業が創出されない限り,「元の木阿弥」である。
 新事業も製造業中心には限界がある。2002年以降の景気回復が輸出主導であったため,米国発のサブプライム・ショックによって日本経済が大きく落ち込んだ。日本経済におけるの稼ぎ頭だったトヨタが創業以来の営業赤字に見舞われたことは記憶に新しい(10年3月期も赤字見通しである)。普及品の製造では,人件費コストという点では他のアジア諸国に太刀打ちできない。また地元志向が強い若者もブルーカラー職を希望しているわけではない。
 地元志向が強い若者のもいわゆるデスクワークばかりに固執しているわけではない。彼らの関心が強いのは町おこしであったり,農業や介護である。しかし,それらの職では生活の見通しが立てにくいため,地元に帰れないでいるわけである。

 景気回復に「自律性が乏しい」中で,その回復の足取りを確固たるものにするには,地方でも需要が大きい農業や介護,環境分野における規制の緩和を含む事業支援であったり,その分野で働く者の報酬の補償にこそ財源を投入すべきではないだろうか。

 (3日は早朝登校したものの,4日は寝坊したため,自宅にて県内景気の分析に当たることにした)

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