2011年2月22日火曜日

主義主張は問わないが

週明け,公務員対策講座,論作文模試の答案を一日中読んでいた。
たった13枚だが,どういう風にコメントしようかと考えたり,もっと書けないかなぁなどと独りごちしていると,なかなか進まなかったからだ。

設題は「経済格差の地域社会への影響を説明し,それに対する対策を述べなさい」。
字数は,山形県職員試験に倣い,2,250字とした。

僕は同講座で講義「経済格差」を1回,論作文指導を2回受け持っている。
論作文2回のうち,1回は模試で,指導は実質1回だ。
しかも,2回目は指導と言っても,答案2通を選び学生自身に評価を書き込ませ,順に講評を述べて貰う合評方式をとっているので,毎年,僕の説明は90分のうちの10分か20分がせいぜいだ。

その短い時間で学生に何を指導するかというと,
一つは,評価のポイント。
理解力(設題に答えているか,内容は専門教科試験のように正確でなくても良いが見当外れではないか),展開力(対策は原因に照応しているか,展開が見通しやすいか),お作法(設定字数の8割超,段落・論点の分量バランス,誤字脱字)。
この3点は,毎年指摘していることだが,学生が同時に受講している有料の生協公務員受験講座における論作文対策という今年の講義で紹介されているポイントと奇しくも一致している。

また3点に関わって,2,250字の場合,冒頭段落で予め展開を予告した方が良い,一段落一論点,一文は短く,接続詞は多用しない,指示代名詞の指示内容は明確になどの指導もしている。後ろの方は中高生のうちにに修得すべきことだが,自身を振り返っても身についていないことが多い。

二つ目は内容に関わることで
主義主張は「採点の対象ではない」と断った上で,
形式論理で済ますな,と諭している。
格差問題を講義すると,必ず「市場経済では格差をなくすことはできない」というコメントをする学生がいる。
それは誰も否定しないことでそれを前提に何をすべきかが問われていることを理解する必要がある。

セイフティ・ネットの在り方にはいくつもの考え方があり,
論作文ではそのいずれかでなければ点を貰えないということはないが,
勉強した上で答えるべきであろう。
それを,単に格差を根絶することはできないという中学生でもわかる形式論理,屁理屈で終わらせていては「不勉強」「考えが浅い」と評価されても仕方ないであろう。

例えば,いわゆる新自由主義者フリードマンは
現行の給付制度では救済対象者が却って「貧困の罠」に陥っているとして,
現在のベーシック・インカムに繋がる「負の消費税」を提唱した。

市場原理を尊重するから市場原理になるべく合致した救済制度を考案した。
市場原理を信奉する学生は「負の消費税」はどういう意味で市場原理に合致し,現行制度は合致していないかを自身で勉強する必要があるが,
それをしないで,市場経済では格差発生は不可避だから現行制度で仕方ない,という答案では「不勉強」「考えが浅い」「幼稚」と判断されても仕方ないであろう。

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