経済合理性から言えばそうだが,という話をもう一題。
今朝の日本経済新聞は「年金抑制遅れる日本―社会保障改革議論再開へ」と題して,日本の年金制度改革の遅れに懸念を示している。
「政府は東日本大震災で停止していた社会保障に関する集中検討会議を4月末に再開させる方針だ」「社会保障改革の議論の論点の一つは年金の支給開始年齢」「高齢化に対応し、年金支給開始年齢を67~68歳に引き上げる改革を加速させる米国や英国、ドイツとの差は鮮明だ。日本は高齢化のペースが欧米より速く、対応が後手に回れば年金を支える現役世代の負担も加速度的に重くなる」。
ちなみに「日本の年金支給開始年齢は60歳から65歳へ段階的に上げる途上にある。国民年金はすでに原則65歳だが、厚生年金が65歳になるのは、男性が2025年度、女性は30年度だ」。
日経は丁寧にも「受給開始年齢の引き上げは受給者からみると、年金をもらえる期間が引き上げ前の世代よりも短くなり、不公平だ」との反論を想定し,「実は年金をもらう平均的な期間は、支給開始年齢が55歳だった1955年当時よりも現在の方が長い」と主張の補強をしており,受給開始引上げ案への日経の肩入れぶりがよくわかる。
理屈はよくわかる。
高齢化が他国よりも早く進んでいる中で,年金受給開始年齢をそのままにしていれば,将来の年金引き上げや増税に結び付くことになるから,受給開始年齢繰り延べ論自体はもっともである。
しかし,年金制度に不安を抱いている国民に現状を丁寧に説明する必要がある。
例えば,先般,マスコミが「主婦の年金救済問題」(勤め人(第2号被保険者)の専業主婦として保険料が課されていなかった「第3号被保険者」が,夫が独立し手自営業者となったために保険料の課される第1号被保険者となったのを知らずに未納でいた状態を救済することの,規則通りに切り替え納付した者との不公平問題)を取り上げ,救済策がわずか2年で撤回に追い込まれたが,「第3号被保険者制度」自体の問題に比べれば,枝葉末節であろう。
その他,パートタイム労働者の厚生年金加入問題(現在は正社員の労働時間の4分の3の労働時間でなければ,加入できない)は,安倍内閣時代に法案化が頓挫して以降,進んでいないようであるが,非正規雇用が3割,女性に限定すれば5割を超した現在,年金財政の安定から言えば,避けて通れない問題である。
(もう一つ,年金の保険方式か消費税方式かという問題もあるが,ねじれ国会の下では当面検討が進まないであろう。個人的にはパートの問題を先に進めた方が良いと思う)
根幹の問題を放っておいてミクロ的議論でなどお茶を濁すのは年金制度に危機感を抱いているとはいえないのではないか。
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