2010年3月30日火曜日

相互抑制システム

珍しく研究室にいる昼間に携帯電話が鳴った。
日曜日に来日したばかりの留学生からだ。
どこにいるの?「銀行です」
「電話番号がないと銀行口座を開設できないといくので,研究室の番号を教えて下さい」

午後,研究室を訪れたSさんから話を聴くと,
銀行口座は開設できたものの,自身の電話番号を持たない者には「キャッシュカードは発行できない」と言われたそうだ。
また,携帯ショップで新規契約しようとしたところ,「旅券に中国の住所が記されていない」ことを理由に契約を拒否された,という。
外国人が携帯電話を契約する場合,外国人登録証が必要とされる。
しかし,登録証の発行には手続から3週間程度かかる。
その代わり,手続時に「外国人登録原票記載事項証明書」が発行されるが,これでは不十分だというのである。

同僚の中国人研究者によれば,「旅券には住所が記載されない者もいるが,みな携帯電話を持っているので,住所記載は条件ではないのではないか」という。
改めて携帯ショップに問い合わせると,「旅券に住所が記載されてなくても,外国人登録証があれば携帯できる。登録証を条件に設定しているのは本社の契約センターなのでショップでは如何ともしがたい」と。

携帯電話の契約に外国人登録証の提示を求められても3週間はかかる。他方,携帯電話を有していないと,電力等公共料金の口座振替等諸々の手続が進まない。また電話番号を記載しないと,銀行口座は開設できない。今回は研究室の電話番号で開設してくれたものの,キャッシュカードは発行されなかった。

ちょうど前日の,アパート・マンションの賃貸契約と留学生保険の発行との関係と同様に,相互に他を必要条件としているために,日本で生活を始めるための最低限の手続が先に進まず,来日したばかりの外国人を煩わせている。

もちろん,銀行口座や携帯電話の不正利用を防ぐために本人確認を厳重にすることは重要であろう。
しかし,本人確認は他でも可能なのだから,発行に3ヶ月掛かる外国人登録証を条件にするが合理的手続とは思われない。むしろ相互に他方の手続の進捗を抑制する原因になっているだけである。

結局,「外国人登録原票記載事項証明書」に加え,即時発行された「国保健康保険証」の両方を提示すれば,新規契約に応じてくれることになったが,あくまでも特例措置であった。
不正利用を防ぐための厳格なチェックは当然として,他に本人確認ができれば,それを積極的に認めるべきであろう。必要を超えた不合理な条件設定は,外国人には日本社会で叫ばれている「国際化」はかけ声にすぎず,日本社会は閉鎖的だという印象を与えるだけに終わりかねないからである。

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