2011年6月26日日曜日

付帯条件か,前提条件か

書きかけのままにしていたので先日のことになるが
日経は22日の社説で「年金・医療の効率化なしに消費増税なし」と見得を切っている。

「高齢化と長寿化、また医療分野の技術革新による年金や医療の給付費増大をまかなうには、消費税と社会保険料の引き上げが避けられない」。他方で「年金や医療制度を徹底して効率化する」ことも求められる。ところが「社会保障と税制の一体改革」では制度の効率化策が「必ずしも十分でなかった」。「具体策をはっきりさせるべきだ」。社説の最後は「具体的な効率化策があってこそ、消費税増税に理解が得られよう」と結すばれている。

宜なるかな,である。
財政赤字が累積して新たな政策手段が打てない状況だが,日本の国民負担率は国際的に見て未だ低く,新たな国民負担を求める余地はある。
しかし,「あれもしたい」「これもしたい」というだけではいくら増税しても足りない。
社会保障の将来展望の一方で,効率化が「付帯条件」として求められるのは当然であろう。

しかし,「年金・医療の効率化なしに消費増税なし」とか「新たな国民負担を求めるのは、年金や医療制度を徹底して効率化するのが大前提になる」という表現は,ともすれば新たな国民負担に踏み出す際の「前提条件」のように受け取れる。
効率化を果たした後に増税という2段階論は果たして現実的だろうか?

「構造改革なくして増税なし」をキャッチフレーズにした小泉政権(2001-06)は任期中,増税を避けることによって高い支持率を維持していた。
しかし,2002年からの景気回復局面においても国債残高の累増傾向に歯止めは掛からなかった。
つまり後年に大きな増税を積み残した。

小泉政権の構造改革と言えば,
道路公団民営化は,民営化委員会の分裂で露呈したように「茶番」だった。
郵政民営化は結局,地方の郵便局ネットワークを危うくしたが,
地方の郵便局ネットワークを維持するには
郵便局の赤字を補填するための金融部門肥大化を認めるべきか,
それとも直接国費を投入するしかないであろう。
それは決して「無駄」の排除ではなく「選択」の問題である。
しかし,さも「民営化=効率化」であるかのごとく郵政選挙の争点にされてしまった。
また,「骨太の方針2006」では,2011年度における国・地方のプライマリーバランスの黒字化を目標に,
社会保障費の自然増のうち毎年2,200億円の削減を推し進めようとして,
生活保護の母子加算段階廃止,雇用保険の国庫負担削減を行ったが,
自公政権の末期には,コストカットに疲れて目標を放棄した(埋蔵金利用で収支を保った)。

「年金・医療の効率化なしに消費増税なし」とか「新たな国民負担を求めるのは、年金や医療制度を徹底して効率化するのが大前提」という表現は耳目を退きやすい,端的に言って国民ウケは良いであろうが,
小泉政権の経験からは「大きな増税の先送り」の感がある。
もちろん,増税派の日経にその意図はないであろうが,であるとすれば「ためにする批判」に聞こえる。

効率化が付帯条件なのか,前提条件なのか,ハッキリするべきであろう。

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