2013年10月24日木曜日

製造業の行方

一昨日22日,日経朝刊は「電子部品、復調鮮明に---スマホや車、市場に広がり 大手6社、7~9月受注最高」と電子産業の活況を報じている。
スマホ,タブレット,自動車に用いられる高機能かつ小型化の部品技術では日本電子部品大手が世界的にリードしており,完成品の需要拡大に合わせて部品受注が回復している,と。

しかし,同日の日経は,「輸出 円安でも伸び悩み---貿易赤字15カ月連続 9月9321億円 成長率減速の公算」と題して,
「新興国の景気が減速していることに加え、生産の海外移転が進み、円安でも輸出が増えにくくなっている。7~9月期の実質経済成長率は4~6月期より減速する公算が大きくなってきた」と解説・予測している。

すでに終了した朝日新聞の連載もの「超国家企業と雇用」が解説するように,日本企業のアジア進出は,中国からタイへ,さらにベトナム,カンボジアへと止まることがない。
1つには,以前から続いている,安い人件費を求めてのことであるが,
もう1つは,市場の近くで生産せざるを得ない,という事情である。
日本で作られた部品を輸入して組み立てていたのでは市場の変化に追いつかない,ということである。
いわゆる「製品のコモディティー(汎用品)化」である。
(組み立てれば済む製品・部品のデジタル化が寄与していると思われる)

今回,スマホ等製品の需要拡大で「7~9月の受注額は、前年同期比29%増の2300億円となり、四半期ベースで過去最高となったとみられる」と報じられた村田製作所の村田村田恒夫社長は,5月20日の日経で次のように述べている。
「電子部品の需要を引っ張っている製品は、スマートフォン(スマホ)とタブレット(多機能携帯端末)だ。世界の市場は成長が続くが、元気なメーカーはすべて海外にある。日本国内の電機産業がこの状態のままでは、必ずしも本物の景気回復にはつながらない」。「当社の場合、対ドルで1円円安になると、売上額への影響は55億円に相当する。..円安が進めば、値下げの圧力が必ず働く..。必ずしも円安が有利とは限らない。競争相手は海外にいる。円高が是正されても、国内にとどまるわけにはいかない。汎用品の生産では海外に出ていかざるをえない」「世界に先駆けて新製品を開発する動きが国内にない」。

村田社長はそこから成長戦略の重要性を説いている。
「電機分野でセットメーカーが研究開発に力を入れるような政策が必要になる。部品会社が高機能化や超小型化で成果を上げても、それを使って製品をつくるメーカーが復活しない限り、最終的に売れる商品群が見えてこない」。

製品開発を促す成長戦略とは何かはともかく,
最終製品で世界をリードする会社が,アップル,サムソンと海外にある以上,
多少の円安では海外への工場進出の流れは止まらないという指摘は貴重であろう。

0 件のコメント:

コメントを投稿