2013年10月19日土曜日

予想通りの結末

新聞によれば,昨18日の,日本経済再生本部(本部長・安倍晋三首相)による「国家戦略特区」決定では,解雇規制の緩和や労働時間規制の緩和(ホワイトカラー・エグゼンプション制度の導入)を見送るほか,混合治療の解禁,農地取引の企業解禁等も認められなかったようだ。
今日の日経は「岩盤規制崩せず」と表現している。




一口に「解雇特区」と表現されているが,中には労働時間規制の例外設置のように,その柔軟化には働き方の多様性を認めるという点で一定の合理性が認められるものもある。しかし,サービス残業が横行している状況では,労働時間規制の特例を設定することに警戒が生じるのも当然のことであろう。
19日付朝日によれば「労働側だけではない。経営側にも懸念があった。特区内の一部企業だけ雇用ルールが変わると、競争条件が不平等になるからだ。今月9日のシンポジウム。規制緩和を求める経営者側も『特区はムチャクチャ。全国同一ルールでないと動かない』と批判的だった」。
厚生労働省も,憲法上,全国一律の規制でなければならない,と突っぱねたようだ。



規制改革会議には,小泉構造改革を主導した竹中平蔵氏や,電力自由化に消極的な姿勢に見切りを付けて経団連を脱退した三木谷浩史楽天会長も委員として招かれていたので,第2次安倍政権の「新自由主義」的傾向を危ぶむ声も上がっていた。

しかし,アベノミクス第3の矢「成長戦略」の概要が発表された6月以降,株式相場に浮揚感が失せたように,参院選挙前という事情があるにせよ,スローガン以上の中身を詰め切れないところ,決定を今週に先送りしたところに「岩盤を穿つ」意思の薄弱さを市場は早くから察知していたようだ。(TPP参加は新自由主義施策とそりが合わない麻生財務相他の議員,電力自由化に消極的な経団連も賛成しているくらいで,新自由主義というより対米追随的政策であろう)

労働法規制の緩和以外も,6月時に予想された範囲内であり,これで「アベノミクスは何であったか」がハッキリしたのではないか!
アベノミクスの第1の矢,大胆な金融緩和は,それによって円高を是正したという評価もあるようだが,円高是正の気運は昨秋位から為替市場に生じていた,そのため為替相場は黒田日銀新総裁の就任以前から円安に振れていたという見方も根強い。実際,上述のように,6月の成長戦略の発表と同時に,市場の浮揚感は失われている。

第2の矢,公共事業の増発は,昨年度補正予算と本年度予算を合せた「15か月予算」で10兆円だけの財政出動の効果があるのは間違いないが,財政に制約がある以上,来年度以降も続くわけではない。

第3の矢,成長戦略は今回決着した通りである。

とすると,アベノミクスの成果は,円高是正の気運に乗じ,大胆な金融緩和で一層の円安を促した。
その結果,輸出企業を中心に経常利益を増したものの,
賃金は上がったわけではなく(毎月勤労統計調査(速報)によると,8月の現金給与総額(事業所規模5人以上)は2カ月連続で減少した,
所定外給与は5カ月連続で増加したものの,所定内給与は15カ月連続で減少した),
むしろ輸入原材料値上がりもあり,日常品の中には値上がりしたもの,これから値上げが予定されるものが出た。

そして,今月1日は,来年度からの消費税増税の予定通り実施が決定した。
(それに合せて復興法人税の1年前倒し廃止や,投資減税等が報道されているが,決定は年末のようだ)

今年1月,出頭パンフレットに載せた「経済指標の解説」で,規制緩和の難しさを見越して「今年を物価上昇と増税決定で終わらせないように」と記したが,予想通りに終わりそうである。

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