2010年7月22日木曜日

望外の成果と

教養セミナー「格差を考える」では,2つの試みをした。

先ず第1に,テキストを替えた。
数年間橘木俊詔『格差社会』(岩波新書)を用いていたが,より具体的なテーマに絞った方が学生が身近に考えて議論しやすいだろうと考えて,山森亮『ベーシック・インカム入門』(光文社文庫)に切り替えた。

第2に,レジュメ登板の二巡目からパワーポイントによる報告を求めることに切り替えた。
基盤教育では全学の1年生必須科目「スタートアップ・セミナー」の共通テキスト『なせば成る』にディベートやプレゼンテーションを持っているから,同様の少人数科目である教養セミナーにも導入しようと考えたのだ。

実施してみると,望外の結果を得た。
確かに議論は活発になった。
第2に,ほとんどの1年生はプレゼンテーションが初めてなのに,前回報告者のそれを見よう見まねで吸収して,「回を追う毎に」(学生のコメント非常にわかりやすいプレゼンテーション(パワーポイントのスライド)を上映するようになった。

他方で,「望外の負」もあった。

第1に,議論は活発になったが,必ずしも深まらなかった。
例えば,「学生に賃金を」という要求が出てくると,学生自身は身近な問題で賛否を議論しやすい。しかし,大勢が,常識的なところ,否になることは初めから目に見えている。
「要求が運動が出てきた背景を考えてみよう」とは終了時の講評で毎回のように諭してみたが,学生としては無理のない面がある。
前テキストは経済学的アプローチに特化していたので,進むうちに知識が蓄積される。しかし,新テキストは,主テーマこそベーシック・インカムに絞られているものの,その先駆けとしてさまざまな思想や政治,あるいは市民運動を紹介しているために,学生には次から次へとトピックスが移ろう感じで,とてもその背景については記述してあっても,細かなこととしか移らなかったのかもしれない。

第2に,上と表裏一体だが,プレゼンテーションもイラストを多用したり,空白を上手く用いたりして,論点や疑問点の提示は効率的かつ明示的にになったものの,盛られない論点が沢山積み残された。
これはプレゼンによるレジュメ自体の制約もある。
レジュメである以上,テキストの叙述を「要約」する必要がある。
さらに,プレゼンを効果的に行なうには1スライドに沢山の情報を詰め込まず,沢山のスライドを「集中的に」費やす必要があるから,取り上げられない論点も多くなる。
難解なテキストも幹だけ示して「なるほど」と思わせる限りでは「効果的」だが,
テキストの叙述を離れて,示されていない,盛られていないから枝葉末節と判断しては本末転倒である。

 7月20日~ 学期末とあって全担当科目でBlackboardへのコメント,リポート入力が重なり,入力のチェックと採点で他のことが全くできないくらいヘトヘトで望外の減量効果有り^/^。仙台経済学研究会でご一緒いている佐々木憲介先生より只腰親和・佐々木憲介編『イギリス経済学における方法論の展開--演繹法と帰納法』(昭和堂)の寄贈。

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