昨日の読売新聞文化欄,磯田道史「古今をちこち」シリーズ「吉田松陰の実像と側面」。
実像とは,開国主義的側面とは別の,外征論的側面。
密航の企てを咎められ投獄中に記した「幽囚録」(1854年)より「蝦夷を開墾して諸侯を封じ、聞に乗じてカムチャツカ、オホーツクを奪い、琉球を諭して圏内諸侯と同じく参勤させ、朝鮮を攻めて人質を取り朝貢させ、北は満州の地を割き、南は台湾・ルソンを収め、漸次進取の勢いを示せ」。また「外征論」(1856年)より,朝鮮には「吾れ(日本)がいかなければ、彼れ(列強)が必ず来る。吾れが攻めなければ、彼れが必ず襲う」
列強諸国のアジア進出を前にした「こういう松陰の複雑な側面の描写はドラマや小説では避けられてきた。主人公が帝国主義者か否かの議論になっては別の話になってしまうからであろう。本当はここに日本史をみつめる一番大切な論点がつまっている」。
善悪で割り切るまえに,
実像としての当時の日本人,知識人の生き方,考え方,感じ方を知りたいものである。
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