2013年7月27日土曜日

その先

2年生向け「専門基礎演習」は今週で終わった。

最終回の最後,講評で語ったことは,
「この半年間は皆さんが独自に調べたことやいろいろな考えが聞けて楽しかったです。
ただ,他方で,毎回講評していたことでもあるんですが,
いろいろ調べてみてわかったメリットとデメリットを平面的に対置する(対置してメンバーに賛否を尋ねる)
その先に,一般には報道されない事情,背景がある,専門だからその先を調べて欲しかった。
しかし,やはりこの科目は専門基礎。
その点は3年時以降の専門演習で鍛えられて欲しい」

最終回は規制緩和。
経済特区,保育所民営化,限定正社員。
それぞれメリット,デメリットまで挙げている。

しかし,例えば,保育所増設しても,待機児童はすぐには減らない。むしろ増える。
つまり,統計上の待機児童数を超えて潜在的待機児童がおり,増設によってそれらが顕在化する。
とすれば,保育所というハードウェアだけでの問題ではない。

限定正社員というと「解雇自由化」と一緒にされて直ちにアベノミクス批判の材料にされる感がある。
敷かし,限定正社員は非正規雇用と違って無期契約だ。
契約内容の事業がなくなれば,解雇されるおそれもある反面,限定な長時間労働を免れることができるので,
上の待機児童問題もその一つである子育て,少子化対策にも貢献する可能性がある。

民主党政権下の昨夏発行された『労働経済白書』平成24年版でも,
「限定正社員」という言葉こそ使っていないが,ある小売企業における同様の仕組みを紹介している。

白書によると「M社員については、2009年度までは有期の契約を前提としつつ、基本的には契約の更新を行う形で雇用してきたが雇用の安定を求める雇用者の声や、A社としても企業のDNAを雇用者に継承したいという観点から、2010年度に、4年目以降は契約を無期とする制度を導入した」とあり,会社側が従業員に非正規雇用以上の働き方を求める意図があったことを明らかにしている。


しかし,非正規雇用と同様の,賃金格差は解消されるのか。
同一労働同一賃金原則による時間賃率×労働時間で正社員と収入が違うだけなのか。
最初から賃金が違うのか。
(演習では非正規雇用と同様に「安い」賃金を自明視する発言もあった)

また,子育てが一段落すると,正社員に戻れるのか。
つまり,個人が選べるのか。
(A社は「社内教育の体系について、経験年数や職務に応じた違いはあるが、基本的に社員間で大きな差を設けず、M社員から社員、F社員からM社員への転換制度も設けている」とされ,白書も「M社員やF社員は、時間外労働や事業所間異動の有無、職務に伴う責任について、自らの希望やライフスタイルと照らしながら選択することが可能であるため、転換制度は一定の転換実績を上げている」と評価している。)

少なくともこの2点が解消しない限り,「第2の非正規雇用」を創設するに等しい。


『労働経済白書』平成24年版p142










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