若い人に接していると,
市場を所与の前提にして,競争や自己責任をそのまま受け容れている印象を受ける。
もちろん,みな「セーフティ・ネットは必要」とはいうものの,
その内容、現状を「知らない」がために,
競争は仕方ない,で済ましかねない。
経済とは異なるが,
憲法や安全保障でも,若い人は置かれた地政的環境や歴史的経緯を「知らない」がために,
「普通の国」を主張して,疑問に感じなそうだ,と思っていた。
ちょうど教養セミナー「格差を考える」最終回は憲法改正。
格差とは異なるが,グループ報告で選ばれたテーマだ。
参議院選挙でも主な関心の一つが、改憲に両院の3分の2の賛成を求める憲法96条の改正であった。
しかし,前の週に選挙も終わり,憲法96条自体を改正する勢力が3分の2に達しなかったので,
関心も憲法改正よりも集団自衛権を可能とする解釈改憲の方に移っていた。
セミナーで討論するには「時期既に遅し」の感があった。
また,報告者側の問題提起も9条改正の方であった。
理由も「9条を変えない限り外交上一歩引いた態度で臨まざるを得ない」という素朴なものだった。
96条改正が現実的はなくなった状況で
96条改正とはすなわち9条改正という身も蓋もない問題提起で議論が弾むかなぁ,と危惧していたた。
ところが,話し合いを始めると,
9条のどこをどう変えるのか,付随して何が起こるかなど議論が具体的な論点に及んだ。
現在,法的には(最高裁の判断としては)国家固有の自衛権は有する(自衛隊は合憲)という立場だ。
では何を付け加えたり,変えたりするのか。
集団自衛権はどうか。
自衛隊を国防軍と解消する意義は何か
紛争地帯にも出て行くのか。
軍隊には必須の軍法裁判(特別法廷)を創設することになるが良いのか。
また9条以外にも国民の権利,義務等の改正で何が変わるのか。
最初の問題提起は粗かったものの,
しっかり勉強している学生が議論をリードしてくれて,
憲法改正に係わって考慮すべきことがいろいろ出てきた。
結果,ほとんどの学生が9条改正にはかなり慎重であることがわかった。
また,改憲派の学生も「安易な改憲が起こる96条改正には反対」としてた。
付随して問題提起された「国民投票に行くか」にも,国のあり方を決める投票なのでみな行くべき,という意見が大勢だった。
経済面では市場主義,もっといえば新自由主義的傾向が強いとの印象を受けていた最近の学生,
安全保障面では慎重,健全だった。
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