2013年3月26日火曜日

ハネムーンはいつまで続くのか

安倍内閣の支持率が70%前後で高止まりしている。

安倍晋三自民党総裁が,総選挙で大胆な金融緩和を唱えた辺りから,為替相場が円安に触れたり,為替相場が上昇に転じたりして,国内経済には活況感が出ていることは確かである。
(為替動向については昨年後半以降,欧州金融危機の再来もあり,円高が調整される局面にあった,という解説もある)

しかし,総選挙では慎重姿勢を示していたTPP問題で交渉参加を表明しても高支持率に変化がない。
景気が浮揚している限り「他は問わない」ということであろうか。
正に「アベノミクス様々」である。


しかし,アベノミクスといっても,経済政策としては必ずしも一貫性がなく,自民党内でさえ理解が一致していないのではないだろうか。
すなわち,「三本の矢」とは呼ばれているものの,
1.公共事業増発こそ,自民党のお家芸であり,党内異論は少ないだろう。
 しかし,財政赤字が累積するなかで公共事業増発を長く続けるわけにはゆかない。
 アベノミスク支持者でも首相の経済学指南浜田宏一氏やポーゼン氏は財政出動拡大に否定的な発言をしている。

2.大胆な金融緩和は,アベノミクスの象徴のように捉えられているが,麻生財務相兼金融相自身がインタゲには消極的で日銀とのアコード締結には否定的であった。
 今日26日の閣議後の記者会見でも2%の物価安定目標について「そんな簡単にいけるものとは思っていない」日銀だけで2%できるなんて、はなから思っていない」と表明している。

3.成長戦略については未だ議論の段階ということもあるが,その理解は二分している。
 甘利再生相のいう,あるいは経産省がリードする成長戦略「ターゲティング・ポリシー」とは,あくまで「官が」成長分野を見定めて支援するものであり,旧来の産業政策の延長線上にある。霞ヶ関を司令塔として頂く限りでは,政官昵懇の自民党もお手の物であろう。
 しかし,日本再生本部の下部組織,産業競争力会議や,安倍首相が「規制改革こそ成長戦略の一丁目一番地」と宣言した規制改革会議では,既に報道されているように,「解雇規制の緩和」など「官の関与を弱める」規制緩和が検討されている。

先日も,安倍昭恵首相夫人が「TPPには最後まで反対していた」との発言が報道されていたが,自民党内にはむしろTPP反対なり,新自由主義反対の立場の議員の方が多数派なのである。

つまり,TPPも未だ交渉段階であるし,成長戦略も未だ検討中である限りで,「アベノミクス」礼賛論が行き交っているが,公共事業増発が長くは続けられず,大胆な金融緩和もその実効性が限られるとなれば(現に外債購入は先のG20で禁止が確認された通貨安政策に該当するので導入できないであろう),いよいよ成長戦略の策定が問題となる

しかし,春闘パンフレットの「経済指標の解説」で触もれたように,成長戦略こそ,支持団体との利害調整が課題となる超難題である。
自民党は郵政選挙で大勝したものの,その後,造反議員の復党問題,郵政株の売却問題等で党内が揺れた過去を持つ。
結局,麻生内閣下の安心社会実現会議で,小泉構造改革路線とは決別して「中福祉中負担」路線に復することを決め,以来,自民党は選挙で消費税増税を訴えることになった。

ところが,自民党の政権復帰を導いた安倍首相は,右翼的言辞が話題になるものの,経済政策については,党内少数派の新自由主義なのである。

政治におけるハネムーンとは,政権発足しばらくは,政権とマスコミとの関係が良好,すなわちマスコミの政権批判も控えめ,という意味である。

しかし,安倍首相が新自由主義的経済政策に傾斜する限り,
安倍第二次内閣にとって,ハネムーンとは党内多数派と少数派のそれであろう。

すなわち,安倍内閣の高支持率の行方は,成長戦略の策定が日程に上った時,党内多数派が一旦決別した新自由主義にどこまで堪えられるか,に掛かっているようである。

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