2012年2月29日水曜日

タイムカプセル

学部旧棟に耐震工事が認められ,工事開始までの約4ヶ月くらいの間に研究室を移動することになった。
広くはない研究室だが,20年の間日本が溜まっている。
また,机や椅子の他に,サイドテーブル2つ,会議用椅子5つ,机の延長としての引き出し1つがある。
事務機器としてはパソコンの他にプリンター2台,FAXがある。
その他,今は使用していない古いノートPCが2,3台あり,
備品の運搬も3,4回に分けなければ済みそうにない。

しかし,なんと言っても,引っ越し作業に大半の労力を費やしそうなのは本だ。
最近の研究者は雑誌論文主体だから,本は教科書,概説書くらいで,後は最新の雑誌を備えるくらいで,空きスペースが大きく研究室を広く見える。
古い世代はこうはゆかない。
論文はもとより,講義準備でも「使うかもしれない」と思って「積ん読」している図書が多い。
実際に使うことは稀なので,一仕事を終えた春休みのこの際,帯出している図書は一切合切図書館に戻すことにしたい。
しかし,それでも大半の本が残る。
私蔵本だ。

自分の院生の頃は「本は買うもの」とされていた。
大学院生は皆,懐事情は芳しくなかったが,
名著や過去に議論の対象となった本は,食事代や酒代をやりくりしても,また徐々にでも「揃えておく」のが美徳とされていた。
論文作成やその前の勉強において原典に当たることは必須だし,
それまでの議論の過程で必読文献は多い。
大学院生やオーバードクターなど出身大学,大学院に居る間は図書館で本を調達するのは容易なことだが,
いざ就職となれば,学部などいわゆる専門部局に就職できるとは限らないから,大学の図書館も当てにできないからだ。
自分自身は「熱心なコレクター」ではなかったが,それなりの蔵書があった。


しかし,いざ研究室の引っ越しが必要になって,室内を見渡せば,
机の前の本棚2列+1列に置いた本,100-200冊は,ほとんどすべて赴任して以来紐解いていない。

研究テーマが移っていったという面もあるが,
論文の習作時代を終えた段階から,論文作成,およびその前段としての調査勉強段階に必要な文献は,名著や過去に論争の舞台をなった本よりも,具体的な一編,一編の論文だ,ということが分かってきた。
大学院生時代の大半は,いわば勉強,習作時代だから,古典的名著などを読むことは重要だったが,
いざ自分が論文を書くとなると,論点を絞りに絞らざるをえないので,
それまでに得た知識がベースになるのは当然として,
引用や参照に必要な文献の数はせいぜい10-20本くらいになる。
そのため,習作時代に勉強した本は,目の前の論文執筆にはほとんど紐解く必要がなくなった。

さて,これらの名著,どうしようか。

いざとなれば,ほとんどが図書館で借りられる。
せっかく集めたので,廃棄処分はしたくない。

耐震工事が終われば,元の研究室に戻るまで,あるいは戻ってからも,段ボールのなかに納められたままになりそうである。
さしずめ開封期限が記されていないタイムカプセル入りだ。


 2月28日 奥歯の矯正器具が外れたので近くの歯科によって登校。外れたのはこの2,3ヶ月で3回目。

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