12月19日 宮城学院女子大学「経済社会特論」。前々回の雇用保険、前回の公的扶助(生活保護)の話を承けて「給付と訓練」。福祉国家体制とポスト福祉国家体制、消極的労働市場政策と積極的労働市場、あるいは就労ないし訓練を給付の条件とするワークフェア、例としてドイツのハルツ改革および日本の求職者支援制度。
積極的労働市場政策との位置づけには従来の給付中心の施策が「消極的」労働市場政策と映るように、「ワーク」フェアとの位置付けには給付にハードルを課する、被保護者に対する無慈悲さ、あるいは性悪説的、上から目線というニュアンスが漂う。
しかし、私は必ずしも反対ではない。
生活保護受給世帯の8割強は高齢者世帯、傷病障害者世帯、母子世帯が占める。つまりオファーがあってもフルタイムで稼げる、労働に能力のある「その他の世帯」は、急増しているといっても、2割弱にすぎない。
まだ生活保護予算の半分は医療扶助であり、国民医療費の3分の1を占める高齢者世帯の影響であるものと推測できる。
さらに話題の不正受給も額にして全体の0.4%にすぎない。
講義では、それらも解説している。
そういった要素を加味しても、現行のセイフティ・ネットには、社会保険制度は安定的就労を前提にする一方で、公的扶助は働く能力ある層を労働市場に戻す仕組みがない、という問題点があるのが現実である。
訓練すれば直ちに正社員の職に就けるわけではないものの、新たな職業能力を身に付ける仕組みは必要であろう。
勤労は国民の「権利」と言っても、働かなくても良い層はごく一部に過ぎない。
にもかかわらず、給付を受け続けたり、ますしてやベーシック・インカムを恒久的に受けたりするうちに、「働かなくても良い」「働かないことを選択する」のではなく、「働くことができなくなる」「働かないという選択しかない」状態になりかねない。
働く女性が、安倍政権の育児休暇3年に危惧を抱くのと同じである。
しかし、レスポンスカードでは「講義は難しかった」。
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