2012年12月5日水曜日

検討しない方が良よい経済政策とは

一橋大学の斎藤誠教授の
「なぜ、無制限の金融緩和が私たちの経済社会にとって有害なのか?」(pdf)

冒頭サマリーで,日銀の預金には日銀券と準備通貨がある,と説いて
日銀券発行による資金調達は、すでに限界に達していた。そもそも、支払手段として必要とされる日銀券の規模は、名目GDPのせいぜい8%である。現在の名目GDPは500兆円弱なので、経済取引に必要な日銀券発行残高はたかだか40兆円程度となる。基金が創設された2010年10月には、80兆円近くに達していた。....それでは、準備預金による資金調達はどうであったか。ゼロ金利環境のところに年0.1%付利されていたこともあって、日銀は法定準備預金額(7兆円台)を超える資金を民間銀行から調達することができた。本年(2012年)10月末で30兆円台半ばの資金を調達してきた。」

「日銀の基金拡大を通じた金融緩和については、供給された大量の紙幣が経済全体を駆け巡るようなイメージを持たれ、デフレ対策の切り札のように理解されがちである。しかし、上述のように日銀の資金調達と資金運用をセットで考えると、金融緩和がそのような効果を持たないことが明らかになってくる。
日銀が基金を通じて民間銀行から長期国債(長国)を買い入れるとしよう。長国買入資金の原資は、日銀券発行が限界に来ているので、準備預金を通じて民間銀行から調達する。具体的には、日銀が長国買入代金を民間銀行名義の準備預金に振り込み、民間銀行は引き続き準備預金に資金を置く。何のことはない、長国は民間銀行から日銀に移動し、民間銀行は長国を準備預金に振り替えるだけである。すなわち、実体経済とはまったく独立に、日銀と民間銀行の間で資金が一巡しているにすぎない。」

「いやいや、気合いを入れて思い切った金融緩和をし、準備預金に頼らずとも、紙幣を経済に無理矢理押し込めば、いずれはインフレが起きるはずである」と主張する向きがあるかもしれない。
しかし、この議論はあまりにも非現実的である。先述の通り、支払手段として経済全体を駆け巡る紙幣量は、名目GDPのたかだか8%である。すると、現在の日銀券発行残高80兆円を経済全体に行き渡らせるだけでも、名目GDPで測った経済規模は1,000兆円、現在の2倍とならなければならない。生産活動が一定だとすると、物価は一気に2倍、年3%のインフレとはわけの違うハイパーインフレである。」

そして,
そのような非現実的な効果を念頭とした経済政策は検討しない方がよい。」(太字,斜体は引用者)

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