2012年8月26日日曜日

議題にも上らないこと

消費税増税に係わる与党民主党と野党自民党および公明党との三党合意のうち,
年金に係わることを列挙すると,

  1. 増税の一部を基礎年金への国庫負担引き上げに充てる。
  2. パートタイム労働者の厚生年金への適用拡大については月給8万8千円を下限とする。
  3. 被用者年金一元化
  4. 未合意点(抜本的年金改革)は社会保障制度改革国民会議で検討する



1.は65歳以上に支払われる基礎年金への国庫負担(税投入)の1/3から1/2への引き上げ財源に今回の増税分の一部を充てる,ということである。 実は引き上げは09年度から実施されている。財源の手当てが遅れていたのである。 そもそも引き上げは94年度から検討され,99年度には「04年度までに安定財源を確保すること」を決めていた。実際には国庫負担引き上げは09年度まで延期されたが,安定財源として想定されていた消費税増税は,「自分の任期中には増税しない」と宣言した小泉内閣が国民人気を博したこともあり,先送りされたままだった。 今回の,民主党の「マニフェストにない」消費税増税派自民党政権の残務整理の面がある。 2.と3.は安倍内閣時に一度は起案されたことである。 今日増大している非正規雇用には少子高齢化時代の社会保険の担い手として期待される反面,基礎年金だけしか給付されないのでは将来心許ない。 実際,加入基準として週労働時間がフルタイムの3/4(概ね30時間)であることが求められているため, パートタイム労働者約1,200万人のうち約300万人しか厚生年金に加入していない。 基準を雇用保険と同じフルタイムの1/2(概ね20時間)を引き上げれば,約310万人が新たに対象になる。 一時的存在である学生や保険料を聴取されない第3号被保険者を除くと,対象は約70万人である。 しかし,同時に月給の最低限を9万7千円,かつ従業員規模300名以上の事業所という条件を課したので,実際の適用拡大は10~20万人に留まる,とされていた。 それでも厚生年金になると保険料の事業主負担が発生する業界(パートの多いファミレス,スーパー)の反対,さらに保険料が発生することを嫌ったパートの第3号被保険者の反対により頓挫した。 安倍内閣のパートへの厚生年金適用拡大案を批判し,300万人超の適用拡大を主張していた民主党も,政権入りすると,零細な事業者負担を考慮し,月給の下限は7万8千円にまで下げるものの,当面は従業員規模500名以上の事業所に限定する案に転じた。これによる新規加入は約45万人とされていた。 しかし,三党合意の過程で,月給の下限を8万8千円に譲歩したため,新たな加入者は25万人程度に止まると予測される。 3.は保険料率の「官民格差是正」のため,厚生年金より低い共済年金の保険料率は毎年段階的に引き上げ,公務員共済は18年9月,私学共済は27年4月に厚生年金と同じ18.3%(労使折半)に統一する,というものである。 4.は今回,三党で合意に至らなかった事項を社会保障制度改革国民会議の検討に廻す,というものである。 その中身は民主党の主張している最低保障年金制度の創設と後期高齢者医療制度の廃止であるから, 見方を変えれば,民主党がマニフェストに掲げていたものの,与野党で対立しとても合意に達しそうにない両項目の追求を体よく棚上げしたようにも映る。シッカリ議論して貰いたい。 さらに年金についてかねて問題になっていたことがあった。 第3号被保険者制度である。 第2号被保険者(いわゆる被用者,勤め人)の専業主婦は保険料を課されることなく,基礎年金を受給できるものの, 第1号被保険者(自営業者,無業者,厚生年金に加入できない非正規雇用)の専業主婦は国民年金の保険料が課される。 もちろん専業主婦(年金制度では年収130万円未満)でない女性就労者は,厚生年金あるいは共済年金の保険料を支払う必要がある。 そのため,第3号被保険者制度は女性自身の就労選択に対し「制度的に中立的ではない」という批判がかねて向けられていた。 ところが,政府民主党自身がこの問題は今回の一体改革案に盛らなかった。 ということは三党の未合意事項を検討する社会保障制度改革国民会議の議題に上らない,ということになるのではないだろうか?
だとすれば,残念でならない。

以上のようなことを9月13日(木),秋田県立横手高校の模擬講義で「年金のはなし」として解説しようと思うのだが,難しすぎるであろうか。

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