2018年12月23日日曜日

2,3分で

 1222,23日,法政大学市ヶ谷キャンパスにて「マルクス生誕200年記念国際シンポジウム」が開かれ,主に日本語セッションに参加した。
 そのうち,初日「資本主義と医療サービス」を報告したAさんは大学講師とお医者さんの二足のわらじ持ちだ。高校訪問した仙台二高の出身でもある。


 そんなこともあり,3つ質問してみた。
 質疑時間は5分なのに手を挙げた者が34名おり,司会者に「手短に」と急かされたため,質問の意図を十分敷衍できなかったが,質問は以下の3点。


1.医療サービスは「疾病や苦痛を取り除く」という使用価値を通して労働力というか商品を修繕し、労働力の維持・再生に寄与するサービス商品」と規定されているが,狭すぎないか。
 美容整形はともかく,予防に力点を置いた生活習慣病の治療もある。

2.その価値論適せ規格について,「労働力商品の価値を形成しうる教育サービスなどと異なり,何かを付加するのではなくマイナスをできるだけ解消する性質マルクスの「生産の空費」であるが、労働力保全のために総労働にとって必須であり必要とされるサービス商品」と規定されているが,すべて価値非形成と位置づけて良いか。
 「生産の空費」という位置付けは,梱包,軽量等純粋な流通費用を価値を生まないとする論拠と同じだから,流通費用についても同じような理解をしているのか。

3.価値を生まないにもかかわらず,原理的に規定する根拠を総資本総労働視点からは必要とされている点に求めているが,1)総資本総労働視点の例として挙げられている社会政策,社会保険は19世紀末以降普及したのであり,原理論に組み込み可能か,2)他方,今日の社会保険の対象は,賃金労働者のみならず,専業主婦や高齢者も対象とされており(後者は財源的に大きな負担になっている),現状分析としては総資本総労働視点は狭すぎないか。

 回答は,今回はひとまず原理論,現状分析を通じる一般的規定であり,細部は今後検討する,という趣旨だったと理解した。

2018年12月18日火曜日

土曜日帰り

 12月7日午前中に論文を仕上げたのも束の間,翌日は三大学合同ゼミ,月曜日からは週末の学会誌『季刊経済理論』編集委員会の準備に追われ,息つく暇もなかった。

15日(土)駒大大学会館246で開かれた編集員会は日帰り。









 仙台市の光のページェントは,思うように協賛金が集まらず,規模も縮小したとか。
「昨年は12月8~31日に実施したが、今年は点灯開始日を12月14日にする。..実行委によると、..企業からの協賛金が年々減少する中、風雨で欠損した電球約14万個の交換費や、ケヤキの成長に伴う電球の取り付けと取り外しの作業費が増えており、昨年と同じ期間の開催は難しいと判断したという」(河北新報11月1日)。
 シンボルツリーも協賛が付かず,見送られる予定だったが,東京の企業の協力が得られ,その名も「スーモわくわくツリー」として実施に至った(同紙2月8日)。

初めての土曜日は例年通りの賑わいだった。

2018年12月9日日曜日

はしがき新旧

 12月7日の締切り当日,東北学院大学『経済学論集』(半田正樹教授退職記念号)向けに投稿した論文「企業内養成熟練と勤続昇給」のはしがき「はじめに」は次の如くだ。
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 われわれは,生産的労働・不生産的労働概念をそれらと表裏一体的に捉えられていた価値形成労働・非形成労働概念と区別し,一方で賃労働を支える再生産労働,他方で価値非形成労働の理論的位置付けを明らかにしてきた。しかし,価値非形成労働の要件については不明確な点を残していた。ここではまずその点に検討を加えた (I.)。
 ついで,価値を生まない労働とは生産過程ではどのような役割を果たしているのかを検討する(II.)。単純労働以外の労働類型として先行研究が指摘する生産過程間の調整を行なう調整労働も,生産過程間が連結可能とする「労働の標準化」も,どちらも追加供給に難があるという意味では,価格変動の重心を規制する価値を生まない労働である。しかし,後者は就労前に,すなわち企業外で形成される熟練であるのに対して,経験による判断が要求される前者は企業内の就労に伴って蓄積される熟練であり,類型を異にすることを明らかにする。
 さらに,後者の場合,労働者の技能養成を誘発する仕組み,賃金制度とはどのようなものか,を最後に検討している(III.)。「労働成果の内容」を評価する後決め型出来高賃金制度を唱える先行研究を検討し,企業内技能養成は,出来高賃金等の賃金形態の問題ではなく,その賃金設計,能力の蓄積を認めたうえでその更なる伸長を促す賃金の等級制度にあること,現行の等級制度の問題点を踏まえて,正規労働者ばかりでなく,実質的に勤続を遂げている非正規労働者にも技能養成を誘発し,不合理な賃金格差を排除しうる能力評価の仕組みと昇級管理を明らかにした。
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 いくら投稿直前に慌てて執筆したと言っても,これではあんまりだ。
 目次を眺めながら要約を記しただけ(実際その通り^^;)で,なぜこのような論文に取り組んだのか,著者の意図が全く不明で,いきなり「要約示めしすから本文読め」というようなものだ。
 そこで,今朝,次のように改めてみた。
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 働き方改革法案の中には,非正規雇用の正規雇用との格差を是正する仕組みが盛られていた。その内,手当や賞与に関しては,法案が通過する前から,一定の是正がみられた。既に2016年12月に政府が公表した「同一労働同一賃金ガイドライン案」に基づいて,訴訟が進み,法案通過の直前,2018年6月1日には,手当支給や(定年退職後,再雇用された)嘱託労働者の正規雇用との賃金格差に係わる2件の最高裁判決が下りている。しかし,複数の決定要素が絡む基本給の賃金格差是正には見通しが立っていない。すなわち,非正規雇用の賃金は,正規雇用と異なり,勤続昇給していない状況の是正は依然として望まれる。
 ここでは,勤続昇給する労働とはどのようなものか,その理論的位置付けを追究した。
 すなわち,まず勤続昇給する労働を,価値を形成する単純労働とは異なる類型とし,価値非形成労働の要件を検討し,その特徴を追加供給困難な労働に求めた(I.)。ついで,価値を生まない労働とは生産過程ではどのような役割を果たしているのかを検討し,技能蓄積が企業外で行われるものと企業内で経験に基づいて行われるものという2類型の労働を摘出した(II.)。最後に,後者の場合,労働者の技能養成を誘発する賃金制度とはどのようなものか,また技能・知識の蓄積とは無関係な勤続昇給が滑り込まないようにするには賃金制度の運用面でどのような工夫が必要かを検討した(III.)。
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 今度は要約が短く,丁寧ではない。しかし,要約自体は「むすびに代えて」でも記している。
 幸い合同ゼミでご一緒した執筆者たちはまだ論文を提出していないようだから,もう少し練ってみよう。


 

好評得られず

 半年に1回開かれる三大学合同ゼミが2018年12月8日(土),宮城学院女子大学で開かれた。
 第35回のテーマは結婚相手は抽選で」。
 ドラマのタイトルだとか
 主催者側の論点にしたがって,各テーブルで議論し,おおよその意見を 順番に発表する,を3ランドこなしていた。

 最後に教師の講評。
 当方のコメントはおおよそ次の通り。

 田中先生からは準備が捗っていないとの連絡を受けていたが,蓋を開けていれば,結婚を少子化問題と結びつけていたので,各テーブルの学生にもわかりやすく,議論がなされていたようだった。
 しかし,結婚と少子化問題を結びつけわかりやすくなった反面として,結婚制度が自明のものとされてしまったように思う。確かに第3ラウンドでは、結婚を前提にしない子育てがテーマになり,フロアーからは婚外子の子育て支援などが提言されていた。しかし,現在,出産,子育ての前提が結婚になっているのはなぜか,事実婚における出産,子育てが広まらない原因は何かに目を向けて欲しかった。例えば,時々ニュースになる「寡婦控除」。死別ないし離婚による母子家庭,父子家庭には所得税,住民税が控除されるが,結婚しないカップルの間に生まれた子どものひとり親世帯にも寡婦控除が適用されるべきか。結婚の結果生まれた子(嫡出子)か未婚のまま生まれた子(非嫡出子)かは子どもには責任はないので寡婦控除を適用すべきという意見もあれば,否,家制度を守るためには非嫡出子の保護は適切ではないとの意見もある。
 こうしてみると,普通いう結婚とは法的保護のあるカップルになるということ。そして,結婚を出産や子育てと一旦切り離して,法的保護の有無に絞ると,最近話題のLGBTも係わってくる。
 たしかにLGBTカップルは子どもを産めない。しかし,カップルのうち年収の少ない方が130万円未満の場合,その者に年金,医療保険等の保険料が課されない第3号被保険者制度は適用されるべきか。同じく年収103万円未満場合,他方の所得税が控除される配偶者控除は適用されるべきか。
 結婚を出産・子育てと一旦切り離してみれば議論に膨らみが出たのではないか。
 
 突然このようなことを言うのでは好評を得られなかったかも知れないが。

 

2018年12月7日金曜日

はしたないはしがき

 今春,東北学院大学を退職された半田正樹教授の退職記念号への論文執筆を同大学の若手教員から誘われた6月初旬の時点ではノーアイデアだった。
 一昨年から考えていたアイデアを昨年度中にようやく2本の論文にした時点で,生産過程論に関する一連の考察は一区切りを付けた気分でいたので,その先は再生産労働に向かうのか,価値生産論に向かうのか,あるいは原論全体の枠組みに取組みかは何も決めていなかった。
 ただ,小幡先生の経済原論の労働論に関しては,賃金制度論の検討を済ませていなかったとの漠然とした思いがあった。

 その後は,ここでも2週間に1回くらい「迷走中」と愚痴っぽく報告していたが,実際は先が見えないため,むしろ先を考えずに一節ずつ積みあげる形になった。

 締切りの今朝,ようやく書き上げたが,はじめにが空欄のままだったので急いで埋めた。目次を読むように順に話の筋を紹介しただけだから文字通り「埋め草」になっているはしたなさ。印刷までに書き替えるとして,ここでは目次のみ記す。

「企業内養成熟練と勤続昇給」
I 価値を生まない労働
 1. もう1 つの労働
 2. 価値形成労働の特徴と要件
 3. 価値非形成労働の特徴
II 追加供給が困難な労働
 1. 熟練労働としての間接労働
 2. 複雑労働としての労働の標準化
 3. 2 類型の異同
III 企業内養成熟練
 1. 技能養成効果のある賃金制度
 2. 出来高賃金とその限界
 3. 賃金の等級制と運用


2018年12月6日木曜日

ムリな半分

 この間,見切り発車で書き始めた原稿の練り直しに終始し,週末も近所のドトールコーヒーを午前,午後,夜と3往復,合間にジムの生活。

 その締切り間際の12月5日,山形県立山形中央高校に出前講義「労働市場のはなし」。

 はなしの筋は,大学の一年生向け科目の担当一コマで講義し,7月に山形西高,先月福島県立いわき光洋高校で講義した内容と変わらないが,今回は50分講義を2コマ。
 いろいろ試みたが,骨格が変わらないので,説明を省くためにスライド枚数を16枚から14枚まで減らした。図表でさえあれば,説明せざるをえないからだ。
 しかし,減らしたうちの1枚は確認問題を穴埋めまとめ文章2枚を択一式問題2題1枚に代えだけだから,実質1枚減。主に図表の割愛。

 やはり時間を少々オーバーした。
 スライドの文章も図表もそのまま読むわけではなく,当然補足する。
 その時,たとえ話をする。敷衍する。やがて薀蓄になる。
 2回目はこの部分をカットした。

 しかし,忙しない。
 やはり骨格自体を見直すべきか。
 1.経済原論らしく労働力商品化のはなし1枚。
 2.労働力調査から労働力人口,完全失業者,非労働力人口。完全失業率からリーマンショック直前からの失業率の推移。非労働力人口から女性の年齢階級別就業率ないし労働力曲線「M字曲線」。3枚プラス確認問題として失業率の計算問題1枚。
 3.内部労働市場 正規雇用と非正規雇用の別発生 2枚。
 4.非正規雇用 特徴,内訳,増大の背景 6枚プラス全体の確認問題1枚。

 結論の4.だけであれば,3.からでも良い。
 しかし,担当が経済原論だから,資本主義経済の根本として労働力商品化は話しておきたい。
 労働力商品化から失業も出てくるが,労働力商品化とは,生産過程が生活過程と表裏一体化していた共同体経済に対し,両過程が分離するということだから,非労働力人口も話たい。M字曲線は,4.の家計補助的労働=安い労働力の伏線でもあるから外せない。

 要は大学の授業は50分ではムリ^^;