2015年5月12日火曜日

資料の選択問題

学生の質問「囲い込みと地租改正が同じとは思えない。」

「資本の原始的蓄積過程(原蓄)」の例として,テキストではイギリスの「囲い込み運動」が挙げられており,講義ではそれとともに,日本では,土地(当時の主な生産手段)の所有権者確定を行なった1873年の「地租改正」がそれに当たる,と説明すると同時に、日本経済史の概説書より,以下の資料を引用し,直ちに近代的賃金労働者が増えたわけではない,と補足した。質問は,この説明の後段のことが引っかかって違和感を覚えたのであろう。



囲い込み運動では,単純に年代別の発生件数を示す折れ線グラフを示したのに対し,
地租改正では,産業・就業形態別の就業者数・比率の推移を示す表と粗密アンバランスだったので,生じた疑問だ。

回答「労働者を生産手段(当時は土地が主)から切り離しただけでは賃金労働者が生み出されなかったのは囲い込み運動enclosureも同じ。都市に追い出されても,まだ産業(資本)が発展しておらず,ホームレスとして流浪し風紀の乱れが懸念された。イギリス政府は「一方では,鞭打・熔印・死刑から奴隷化をさえ含む威嚇的な措置によって浮浪や乞食を禁止するとともに、他方ではそうした流民たちをなんらかの形で生産部面に復帰させようと努力した。「懲役職場」などを設けて浮浪者たちの手に職をつけようともした」(大塚久雄『欧州経済史』p34)」。

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