2012年7月18日水曜日
何の因果か
またまた古い記事なるが,2日前,日本経済新聞に「働けない若者の危機」という特集が載った。
2011年の,15-24際の完全失業率は8.2%で20年前に比べ2倍近いとして,その原因を探っている。
その中には若者サイドの要因も指摘しているが,
疑問なのは何が原因と考えているのか,がよく読み取れないことだ。
大学と企業の役割を指摘するコメントも付されているし,古賀連合会長や竹中平蔵氏へのインタビューも載せられている。
第4面にはグラフが上下に4つ並んでいる。
一番上が15-24歳層の非正規雇用率および完全失業率の推移を示す折れ線グラフであり(第1図),
その下に「(シニア雇用)雇用を阻むのは」としてその原因とおぼしき3つのグラフを揚げている。
1つは「職場にとどまる団塊世代」として就業率の推移をみると,60-65歳の就業率が上昇し,全体の就業率を僅かに上回ったことを示している(第2図)。
その次は,「(企業)狭まる門戸」として,企業の新卒求人数の棒グラフに対し折れ線グラフで25-34歳層の雇用者中の正社員率の低下を示している(第3図)。
一番下は「(若者)高学歴でも就職難」として,大学・短大就職率の上昇を示す折れ線グラフと,未就職卒業者数の変化を示す折れ線グラフを描いている(第4図)。
これらのグラフからすると,日経は,定年延長ないし再雇用(第2図)が企業の新卒採用を抑え,若年層後半の正社員比率を押し下げ(第3図),大学・短大進学率が上昇したとは言え,未就職卒業者数の増加を招いている(第4図)と言いたいのかもしれない。
実際日経は同日の記事「定年後の継続雇用 基準は」で,今国会で審議予定の高年齢者雇用安定法(高年法)改正案では継続雇用は希望者全員に認めなければならなくなり,「企業の負担が大きすぎ若年者の雇用を妨げかねない」との経団連幹部のコメントを載せている。(高年法は,(1)定年の引き上げ(2)継続雇用制度の導入(3)定年制の廃止のいずれかを企業に強いているが,多くの企業が選んでいる継続雇用制度の場合,労使協定で選定基準を決めれば、基準に該当しない人の雇用を断ることもできる)
しかし,高年法は基礎年金支給年齢の繰り延べにともなって自民党政権時代に制定されたものである。
今現在,前述のように継続雇用の場合,企業に選択権がありながら,若年層の非正規雇用比率や完全失業率は上昇している。
希望者全員に改めず,選択制のままなら事態が改善するの,と言いたいのであろうか。
そもそも記事およびそのグラフの因果関係は曖昧だ。
60-65歳の就業率が急上昇したのは07年以降であるのに対し(第2図),
若年層の前半の15-24歳層の非正規雇用率および完全失業率が急上昇したのは90年代初頭から2000年代初頭の間である(第1図)。未就職卒業者数が増えたのもほぼ同時期である(第3図)。
日経の揚げる「第1の理由」(継続雇用)とは時期が一致していない。
むしろ,90年代初頭から2000年代は初頭の15-24歳層の非正規雇用率と完全失業率の急上昇,および未就職卒業者数の急増をもたらしたのは,1985年の労働者派遣法の成立(当初13業種限定),1999年の同法改正(原則自由化)呼び2004年の製造派遣の解禁の方ではないだろうか。
これに係わって,同紙は竹中平蔵氏のインタビューを載せ「規制を緩和したからではなく,むしろ改革が不十分だからこうなった。同一労働・同一条件を確立する『日本版オランダ革命』ができれば,制度のひずみが是正される。厳しすぎる解雇ルールを普通にすれば,企業は人を雇いやすくなる」と語らせている。
しかし,日本以上に解雇ルールが緩やかな欧米では若年層の失業率は日本よりも低いであろうか。
同特集の資料(下表)ではその逆である。
日本の新卒一括採用制度のおかげで若年層の失業率は高くなったと言っても,国際的には未だ低い方に留まっている。
何の因果か判らないままに,結論先にありきで講釈をたれる経済紙には困りものである。
7月17日 3連休の間,自宅地区のドトールコーヒーを3往復。朱を入れてはプリントアウト,また手入れ。その甲斐あってか一仕事区切りを付け事務で久し振りに走る。バテバテ。「経済原論」は法人資本主義前半。ここ2週間は以前の1回分を2回に分けて解説。
7月18日 「市場と組織」は非正規雇用。後はレポート。
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