少し古い記事だが,
6月末,求職者支援制度による就職実績が7割弱との記事が出た。
同制度は,麻生政権がリーマン・ショック後,失業給付をもらえない人(加入条件,給付条件を満たさない人,主として短期修了者),および給付が切れた長期失業者(給付期間は保険期間20年超の中年でも最大330日)を対象に,職業訓練を条件に月10万円の生活費を支給することにした基金訓練が原型である。
同制度は時限措置だったため,期限切れとなる11年10月から恒久的な求職者支援制度に衣替えした。
給付に際しては,世帯の収入,資産が一定水準以下であることが条件となる。
しかし,訓練期間が3-6か月,給付期間も1年(訓練期間1年を超える場合には例外的に2年間),一度給付を受けると向こう6年間給付を受けられないこと(受給開始日から6年)から実効性が話題になっていた。
新聞記事によると,
「無料で職業訓練を受けられる求職者支援制度を、昨年10月の開始から1月末までに利用した人のうち、就職できた人の割合が70%前後だったことが28日、わかった。」
他方で,
「利用者側には制度を評価する声が多い。ただ、利用者の就職の質については「必ずしも高くない」との指摘がたえない。/ホームヘルパーの講座を修了した東京都の50代の女性は、介護事業所の就職が決まった。ただし、週3日勤務のパートだ。/今の制度では就職の雇用形態や期間は問われず、受講後に1日でも働けば就職したことになる。事業者が自ら雇ったり、派遣会社に登録させて1日だけ派遣したりしても「就職」だ。」
その上で記事は「就職の質や定着状況を点検する仕組みをつくって改善していかないと、政策として不十分」というNPO理事長の指摘を紹介して記事を結んでいる。
確かに就職の質は問題である。
しかし,給付期間1年,再受給は6年後という量も問題ではないか。
現在,生活保護受給者が増えている。
10月1日付人口に占める被保護人員の割合,保護率は95年の7パーミル(千分の1)を底に上昇の一途である。
世帯毎に支給される生活保護では,高齢者世帯が4割強,障害者世帯が4割弱,母子世帯が8%前後を占め,働く能力のある層,分類上「その他の世帯」は1割前後に過ぎなかった。祈念,その他が急増し,10年度は16.1%を占めるまでになった。
というのも,雇用保険は雇用見込み期間31日以上(08年度まで1年以上),週労働時間20時間以上という加入条件が設定されている上,受給には保険期間が1年以上必要である(会社都合離職は6ヶ月以上)。また,受給できても,最大日数は330日に過ぎない。
そこで働く能力のある層が生活保護に流れ込んだ。
(「百年に1度の危機」リーマン・ショックでは派遣切りが横行したことは記憶に新しい)
しかし,生活保護には,最近話題になっている扶養義務の範囲ばかりでなく,給付だけで労働能力のある層を再就職に結びつける仕組みがない,という限界がある。
失業給付を受けられない層,同給付が切れた層を対象にした求職者支援制度が,雇用保険に続く「第2のセイフティ・ネット」として求められる所以である。
しかし,1年超の失業者が,3ヶ月毎の集計では昨年1-3月まで延び続けたという状況を考えると,受給期間が1年というのはいかにも短くはないだろうか。
現在,製造業の海外移転などにより,一旦職を失った者の再就職は難しい。
生活保護と異なり,職業訓練の受講(やむを得ない欠席も2割未満),ハローワークでの求職,むやみに就職斡旋を拒否しないなど受給に厳しい条件を課しているのだから,せめて受給期間には余裕を持たせても良さそうなものではないか。
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