2019年7月17日水曜日

多層化したこんにちの労働

三連休のため,16日火曜日,特集を担当していた学会誌『季刊経済理論』第56巻2号が版元,桜井書店より届いた。

 「特集にあたって」の末尾は次のように結ばれている。
「以上4篇の論文によって,賃労働内部でもまたそれを支える家庭内の労働との関係でも多層化したこんにちの労働の一端が浮かび上がったのではないだろうか。また,47巻3号(2010年10月)の「労働論の現代的位相」以来9年ぶりに労働に焦点を当てた本企画を,本誌前号に掲載された昨年の全国大会共通論題「転換する資本主義と政治経済学の射程―リーマンショック10年」の諸報告と比べて欲しい。後者は対象を家計自立型非正規雇用と限定正社員から成る「一般労働者階層」,あるいは非正規雇用からパート主婦を除いた「アンダークラス」に絞り,労働力の再生産が危機に瀕していると訴えている。他方,本企画では,貧困に止まらない問題を浮かび上がらせるために,労働自体が多層化している面に焦点を当てようとした。併せて読み,比較しながらこんにちの労働の諸相と課題を検討して欲しい。最後に非会員でありながら,一面識もない当方の申し出に応じて,論文を寄稿して下さった大槻氏に謝意を表したい。」

 ここでは何度か指摘したが,
 貧困は重要な問題である。
 しかし,誰も否定できない貧困問題の重要性を言いたいがために,非正規雇用の増加即貧困という粗っぽい論法では困る。
 事実に反し学問への信頼が失われる。
 貧困の真の原因を見定めないと,対策も立てられない。(契約更新を繰り返す非正規雇用の無期転換は重要だが,それだけでは問題は解決しない。社会保険の負担の仕方や離婚後の生活など具体的な問題が横たわっている)
 正規・非正期間,正規内,非正規内,あるいは賃労働以外の,家庭内やNPOにおける労働など労働の多層化,多態化している現実を視野に入れなければ,「同じ労働者」「労働者間の連帯」と言ってもスローガンに終わる。

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