この二,三週間,中間テスト(担当科目ではどれも単元毎のまとめテストを2,3回行なっている)の採点,期末テストの作成(つまりまとめシート2か3),学期末までの講義資料の作りだめに追われていた。
この週末ようやく時間が空き,自分の仕事をしようとした。
春合宿の報告「熟練養成と賃金制度」(論文「企業内養成熟練と勤続昇給」の一部を拡充),価値形成労働/価値非形成労働,あるいは単純労働/複雑労働という視角から,こんにちの日本の正社員における勤続昇給問題を考えようとしたが,原理論と現状分析という異なる次元の問題が混在していて,焦点がわかりにくいとの批判を受けた。
どうも勤続昇給に係わる査定に拒否反応が多かったようだ。
経済学原理論でそこまで踏み込む論者はほとんどしない。
しかし,例えば,小幡道昭先生の『経済原論---基礎と演習』(東京大学出版会,2009年)では,賃金制度について,評価が加わるケースが検討されている。論文でも報告でもその議論を検討したうえで,査定とそのあり方を論じた。決して勝手な,思いつきの議論ではない。
とはいえ,生産的労働/不生産的労働から価値非形成労働,さらに複雑労働を踏まえて勤続昇給する労働を1つの論文,報告で説明するのは欲張りすぎ,詰め込みすぎだったかも知れない。
そこで,合宿以降,その前段,価値非形成労働と複雑労働の関係に絞って練り直そう,と思ったのだが,時間が取れないままに進んだ。
そして,この週末,といっても採点が日曜日午前中まで続いていたので,実質日曜日午後だが,春合宿の報告スライドを眺め直してみた(実は前期中もスライドはたまに見直していたが。。。)。
しかし,気になったのはさらにその前段,価値形成労働の理論的位置付け,導出の仕方の方だった。
結局,I.価値形成労働の位置づけを明確にしてこそ価値非形成労働に焦点が当たるという関係にある。
また,II.現在流布している経済原論系の書籍には,価値形成労働を単に人間の生理学的力能の支出のように捉える考え方が目立つ。そうである限り,単純労働と複雑労働,あるいは裁量性の高い労働など労働の多様性,家事労働やNPOの活動など労働の多態性に着目されることがない。「みな同じ労働」と同質性が強調される。
I.との関係で言えば,価値形成労働の実体が生理学的力能の支出に求められる限り,価値非形成労働の位置付けは曖昧になる。
家事労働やNPOの労働など商品を生産しないから価値非形成労働なのか,商品を生み出していても価値形成労働の条件を満たさないから価値非形成労働なのか曖昧になる。そもそもその違いが意識に上らない。
この点が気に掛かったので,日曜日午後の短い時間,価値形成労働の引き出し方,経済原論上の序次について少し考えてみたのだが,結果,次回に回す,となった。
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