2019年7月27日土曜日

一息

 7月27日(土) 2つの科目のまとめテストの採点を終え,単位評価を済ませた。
 どちらも毎回確認問題で配点しているほかに,論述式を交えたまとめシートを2,3回実施し,その素点合計で単位評価している。
 今年度は最後のまとめシートもオンライン回答方式とし,最終回の前に回答を締切り,最終回で採点基準を示し,講評することにした。
 そのため,先週末から空いた時間を全て採点に費やし,結局ジム通いも1週間辛抱した。

 その採点を午前中に終え,夕方には久しぶりにジムで身体を動かすことができた。
 何よりほぼ一週間ぶりに自分のテーマに時間を費やすことができた。

 価値非形成労働,複雑労働,評価を伴う労働と呼ぶなりすぎた前論文の反省から,価値形成労働/非形成労働の設定,さらに遡って生産的労働と価値形成労働の関係を考え直すことにした。
 というのも,従来表裏一体として捉えられてきた価値形成労働と生産的労働とを分けて取らえる,両者の間の断層に着目することが,博士論文ないし前書のポイントであったが,学会では全く逆に生産的労働概念ないし生産過程論という視角を端折る傾向が進んでいるように思えるからだ。

 そこで,スライド場で考えを練ったり,evernote上の過去のノートを取り出してみると,既に同様のことを考えていた^^;。
 そもそも上のような学会潮流に棹さす形で2年前に論文を発表していた(「生産過程論の埋没とその影響」)。

 しかし,事態は変わらない。
 これは自分の見解が受け入れられていないということだから,一層掘り下げて考える必要がある。
 改めて検討対象とした文献を読み直す。
 ノートを取り直す。

 そうすると,以前は気付かなかった問題点が浮かび上がった。
 「生産過程論の埋没」という結論には変わりないが,その埋没の仕方,形骸化の仕方が明らかになったように思う。
 これだけでは論文にならないが,生産過程論の重要性に思いを新たにした週末であった。


2019年7月17日水曜日

多層化したこんにちの労働

三連休のため,16日火曜日,特集を担当していた学会誌『季刊経済理論』第56巻2号が版元,桜井書店より届いた。

 「特集にあたって」の末尾は次のように結ばれている。
「以上4篇の論文によって,賃労働内部でもまたそれを支える家庭内の労働との関係でも多層化したこんにちの労働の一端が浮かび上がったのではないだろうか。また,47巻3号(2010年10月)の「労働論の現代的位相」以来9年ぶりに労働に焦点を当てた本企画を,本誌前号に掲載された昨年の全国大会共通論題「転換する資本主義と政治経済学の射程―リーマンショック10年」の諸報告と比べて欲しい。後者は対象を家計自立型非正規雇用と限定正社員から成る「一般労働者階層」,あるいは非正規雇用からパート主婦を除いた「アンダークラス」に絞り,労働力の再生産が危機に瀕していると訴えている。他方,本企画では,貧困に止まらない問題を浮かび上がらせるために,労働自体が多層化している面に焦点を当てようとした。併せて読み,比較しながらこんにちの労働の諸相と課題を検討して欲しい。最後に非会員でありながら,一面識もない当方の申し出に応じて,論文を寄稿して下さった大槻氏に謝意を表したい。」

 ここでは何度か指摘したが,
 貧困は重要な問題である。
 しかし,誰も否定できない貧困問題の重要性を言いたいがために,非正規雇用の増加即貧困という粗っぽい論法では困る。
 事実に反し学問への信頼が失われる。
 貧困の真の原因を見定めないと,対策も立てられない。(契約更新を繰り返す非正規雇用の無期転換は重要だが,それだけでは問題は解決しない。社会保険の負担の仕方や離婚後の生活など具体的な問題が横たわっている)
 正規・非正期間,正規内,非正規内,あるいは賃労働以外の,家庭内やNPOにおける労働など労働の多層化,多態化している現実を視野に入れなければ,「同じ労働者」「労働者間の連帯」と言ってもスローガンに終わる。

2019年7月15日月曜日

8年ぶりに参加

 大震災の年以来,久しぶりにサッカー観戦。

 この間,平日は様々な用に追われ,週末も来週,再来週と採点予定が入っている。
 ここしかない三連休,近所のドトールに通い詰めるしかないが,かといって久しぶりに論文構想に向かってもそうは進まない。

 そこで,チケットを事前に貰っていたこともあり,ユアテックサッカースタジアムへ。その前に,スタジアム近くのジム系列店で。先週は忙しくってほとんど通えなかったので,開始前に一汗。
 貰ったチケットはビジター席(ゴール斜め後ろ)、鹿島アントラーズのユニフォーム一色。試合前にエールの交換なのか,応援チャントが大音声で響いていた。試合自体は鹿島アントラーズの完勝。4点のうち3点は右サイドを崩してから左に振って,というパターンだったと記憶する(前半は相手ゴールから一番遠いところにいたのではっきりは見えなかった)。

 三連休の成果は?
 見えない^^;。むしろ苦し紛れに?故馬渡尚憲先生の研究会,仙台経済学研究会第45回大会の報告を申し込んだ。
 この研究会,最近は,あるいは先生御存命中から経済学史の報告中心だったので,膨張だけとか,その後の懇親会だけとかの参加になっていたが,被災ぶりに原論屋として報告することにした。

 「労働抽出の位相と労働概念の多層性」はあくまで仮題。
 だって学期中は構想練りも休み休みで進んでいないもの。

久しぶりの新潟

新潟駅万代口
会場の朱鷺メッセ
7月9日 大学の高校教師向け進学説明会参加のため久しぶりに新潟訪問。新潟は何年ぶりだろう。確かJRが工事中のため山形から高速バスで訪問した記憶がある。工事が山形新幹線,山形-米沢神田とすると20数年前になる。

 学部紹介は1学部2スライド5分の割り当て。
 そこで1スライド目の入試は改組により3つの入試区分が生まれた,AOとセンターを課さない推薦IIが現1年生から始まったに留め,2スライド目の教育的特徴を中心にした。
 「進学率上昇に伴い従来の専門教育以外に,専門と現実を結ぶ科目を学部共通
科目として配置した」。「AI時代のジェネリックスキル」,「企業と連携する実践科目(モンテディオ,楽天)」,「キャリア科目(座学のキャリア科目,学生が出向く就労体験・インターンシップ,実務家が来て講義する地域社会論,自治体経営,労働と生活)」等々力説した。

 しかし,その後の,学部毎にブースに分れて質問を受付けたところ,ほとんどの質問は入試,しかも推薦入試等特別選抜に関するものが中心だった。

 難しいところ。
 カリキュラムの特徴を理解したうえで志願して貰いたい。そこで,改組の経緯はどうであれ,新カリキュラムの特徴を中心に説明する。
 しかし,参加したのは高校の進路指導の先生方の関心は専ら入試にある。そもそも入試に受かられなければ,入学後のカリキュラムもへったくれもない。
 また,入試に関する質問は,校内で相談を受けた個々の生徒の学力や併願先等がまず念頭にあり,個別具体的な項目に関してなされるので,全体の説明の場面では一般的な制度の話しかできない。
 やはり学部毎ブースで個別に対応し,プレゼンは教育内容中心にするしかない。
 



2019年7月8日月曜日

日曜日の午後,束の間に

 この二,三週間,中間テスト(担当科目ではどれも単元毎のまとめテストを2,3回行なっている)の採点,期末テストの作成(つまりまとめシート2か3),学期末までの講義資料の作りだめに追われていた。

 この週末ようやく時間が空き,自分の仕事をしようとした。
 春合宿の報告「熟練養成と賃金制度」(論文「企業内養成熟練と勤続昇給」の一部を拡充),価値形成労働/価値非形成労働,あるいは単純労働/複雑労働という視角から,こんにちの日本の正社員における勤続昇給問題を考えようとしたが,原理論と現状分析という異なる次元の問題が混在していて,焦点がわかりにくいとの批判を受けた。

 どうも勤続昇給に係わる査定に拒否反応が多かったようだ。
 経済学原理論でそこまで踏み込む論者はほとんどしない。
 しかし,例えば,小幡道昭先生の『経済原論---基礎と演習』(東京大学出版会,2009年)では,賃金制度について,評価が加わるケースが検討されている。論文でも報告でもその議論を検討したうえで,査定とそのあり方を論じた。決して勝手な,思いつきの議論ではない。
 とはいえ,生産的労働/不生産的労働から価値非形成労働,さらに複雑労働を踏まえて勤続昇給する労働を1つの論文,報告で説明するのは欲張りすぎ,詰め込みすぎだったかも知れない。
 そこで,合宿以降,その前段,価値非形成労働と複雑労働の関係に絞って練り直そう,と思ったのだが,時間が取れないままに進んだ。

 そして,この週末,といっても採点が日曜日午前中まで続いていたので,実質日曜日午後だが,春合宿の報告スライドを眺め直してみた(実は前期中もスライドはたまに見直していたが。。。)。
 しかし,気になったのはさらにその前段,価値形成労働の理論的位置付け,導出の仕方の方だった。
 結局,I.価値形成労働の位置づけを明確にしてこそ価値非形成労働に焦点が当たるという関係にある。
 また,II.現在流布している経済原論系の書籍には,価値形成労働を単に人間の生理学的力能の支出のように捉える考え方が目立つ。そうである限り,単純労働と複雑労働,あるいは裁量性の高い労働など労働の多様性,家事労働やNPOの活動など労働の多態性に着目されることがない。「みな同じ労働」と同質性が強調される。
 I.との関係で言えば,価値形成労働の実体が生理学的力能の支出に求められる限り,価値非形成労働の位置付けは曖昧になる。
 家事労働やNPOの労働など商品を生産しないから価値非形成労働なのか,商品を生み出していても価値形成労働の条件を満たさないから価値非形成労働なのか曖昧になる。そもそもその違いが意識に上らない。

 この点が気に掛かったので,日曜日午後の短い時間,価値形成労働の引き出し方,経済原論上の序次について少し考えてみたのだが,結果,次回に回す,となった。