2019年3月10日日曜日

フォーカスのズレ

 この2週間,専ら学会の仕事に専念していた。
 目処が付いた今週末,ようやく八王子で開かれる研究合宿での報告「企業内養成熟練と賃金制度」の報告資料づくりに取りかかった。
 難航しているのは,元々の論文が難産の果てに産み出されたからだが,それは繰り返しになるので割愛^^;

 元々はこんにちの多様な労働とその処遇問題をどう捉えるか,という問題意識がある。
 一方に,日本企業は従業員の雇用が守られ,年功賃金のメンバーシップ型だが,女性の社会進出により企業本位の長時間労働は難しくなったし,低成長によりそのカバーできる範囲が狭まり,格差の激しい非正規雇用が若年層を中心に広がった。今後は,メンバーシップ型から職務に応じた処遇ないし企業組織,ジョブ型に切り替えるべきであり,幹部候補以外は職務と昇給が限定された限定正社員になる,という見方がある。
 この場合,職務ベースであってメンバーシップ制ではないから企業からの自立性が高く,会社人間ないし社畜的に私生活(どころか生命)を捧げること(過労死,自殺)もなくなる,ということであろう。

 会社人間,まして過労死・自殺を擁護するわけではまったくないが,上の認識の底に,かつての産業別労働組合に集うブルーカラーのイメージが念頭に置かれていないか,という疑問がある。流動性が高く,当然会社から自立している。
 
 しかし,こんにちの日本では非正規雇用も勤続期間が長い。
 『パートタイム労働者総合実態調査』(H28)によれば,その67.5%は有期契約であり,平均契約期間9.6ヶ月,平均更新回数9.2回である。非正規雇用にも同一企業への勤続傾向が認められるのである。元々勤続初給は日本だけの傾向ではない。しかし,その間の技能・知識の集積は認めれず,勤続昇給していない。

 不熟練労働者か,熟練労働者でもその技能・知識に企業特殊性がなく勤続昇給することもない,離職のコストを意識しないから企業からの自立意識の高い労働者か。
 企業への忠誠という意味ではなく,勤続昇給の傾向があり,離職しないわけではないが,離職のコストも意識している労働者か。
 こちらの関心は後者にある。教壇に立つ大学の卒業生のほとんどは後者になる,という認識があるからである。
 

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