2019年1月2日水曜日

理論の後退


 2019年謹賀新年
 
 年末,博論の指導をして頂いた先生に近況報告をメール送信した。
 文章は長くなったが,要点は2つで,12月初め仕上げた論文の要旨,論点構成と今後の抱負・関心だ。

 そこでは今後,研究を進める方向として,
1つは,久しぶりに論文で考察した賃金形態について最新の動向を含め一層調査,検討をすることであり,
もう1つは,理論と現実との関連性を示すことだ。

 後者の背景,意図としては,現実の資本主義経済は大きく展開し,従来の発展段階論や現代資本主義との有効性が問われるという学問状況や,雇用保障等の悪化が進むという時代状況の中で,自分の研究が経済学原理論という領域の,さらに狭い領域の枠内に止まっているという半生,焦りもある。

 しかし,それ以上に,上述の学問状況や時代状況のゆえに,学問研究として前面に出ているのは,疾に下火になったと思われていた絶対的窮乏化論やいわゆる全般的危機論ではないか,という疑問,危機感である。
 そこでは戦後,経済学会の資源が集中的に投じられ,学問的に発展してきた価値形態論を始めとする流通形態分析や,段階論を中心とする現代資本主義論の立体的重層的展開が端折られ,私的生産と社会的再生産の矛盾,非正規雇用増大による社会存立の危機が直裁に主張され,むしろ理論分析が後退しているように見える。

 しかし,景気は変動し,失業率は低下し,非正規雇用比率も低下する。
 生活保護の被保護者数も減少する(高齢単進化により世帯数は増加)
 にもかかわらず,賃金労働者の就労条件や生活状態の改善や将来不安の解消はさほど進んでいない点を浮かび上がらせるためには,
・先進資本主義諸国の低成長経済への転換を理論的に位置づける現代資本主義分析,
・こんにちの雇用問題を,労働者派遣法が成立した1985年以降ではなく,労働市場の二重構造という枠組みの中でその形態転換として位置づける段階論的分析,
・仮想通貨やフィンテック ,あるいは労働のAI転換など,産業資本に限定されない資本形態の多型性分析
 が求められるのではないか。

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