2018年2月6日火曜日

まとめ

 連合山形の『春闘パフレット』に毎年「経済指標の解説」を寄稿している。
 今月分は既に先月末に投稿した。以下はそのまとめ部分だ。

◇まとめ

以上、全国経済および本県経済に係わる諸指標を追ってみた。
 政府も県も景気回復を自信気に宣言し、主要企業アンケートでも来年後半まで景気回復が続くとの予想が多い。
 しかし、消費者サイドに立つとその実感が伴わないとの指摘は多い。例えば、1月5日付日経は、4月の日銀総裁人事、6月の財政健全化計画の改定を前にして「6年目に入った安倍晋三首相の経済政策、アベノミクスは今年、最大の正念場を迎える」とし、「物価は伸び悩み、デフレ脱却を宣言するには至っていない。実質賃金も増えず、景気拡大に実感が伴わない一因になっており、アベノミクスの急所となっている」と指摘している。
 物価が伸び悩み、かといって実質賃金が増える程の賃上げが起きないのは、企業が国内投資に限界を感じているからであり、消費者も社会保障等将来不安により財布の紐を緩められないからである。
 日本では、人口減少による国内市場縮小が懸念され、人口減少による国内市場縮小予測が先に立ち、海外企業の買収には熱心でも、国内投資はせいぜい市場の維持と人手不足対応の省力化投資に止めている。企業の内部留保の累増がその証左である。
 他方で、1995年の0.7%を底に保護率が上がり続けた生活保護は、半分超が高齢者世帯であり、さらにその9割が高齢単身世帯である。将来は「下流老人」という不安が払拭されない限り、少々の賃上げでは財布の紐が緩むことはない。景気回復への自信が覗く国や県の月例経済報告でも唯一、個人消費が弱気の表現になっている所以である。
 安倍政権では、首相の音頭取りもあって賃上げが続いているものの、賃上げ幅は、2015年をピークに年々縮小している。昨夏、経団連加盟企業ではボーナスが前年割れした。
 より一層の賃上げ、そして国内市場の充実を図るには、長時間労働を見直し、余暇時間を確保したうえで、社会保障制度改革によって将来不安を払拭し、国内で消費される保育やケアなどの市場を膨らませることであろう。
 プライマリーバランス達成を目標とする安倍政権は、医療報酬・薬価基準、あるいは介護報酬、生活扶助費の見直しによって、社会保障予算の自然増を年5千億円に抑える計画を立てている。しかし、パッチワーク的な改革で社会保障に対する将来不安を払拭するのは難しく、個別費目の引き下げは社会保障収縮をイメージさせ、むしろ不安を増幅させる。低所得者向けに最低保証年金を創設するなど根本的な改革が望まれる。

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