ここ2,3日,安倍政権が配偶者控除の見直しを検討していることが報じられている。
20日の朝日新聞は,安倍首相は経済財政諮問会議・産業競争力会議の合同会議において「最大の潜在力である女性の活躍について、施策の具体化を進める」と宣言し,働き方を制約しない税・社会保障制度の見直しを検討するよう指示した,と報じている。具体的に見直しの対象とされているのは,配偶者控除や年金における第3号被保険者制度である。
しかし,政府自民党は,昨年の参院選挙では「配偶者控除制度の維持」を謳っていた。
第3号被保険者制度に至っては,2012年夏,消費税増税法案の前提とされた三党合意にも盛られていない。
消費税増税の決定は「税と社会保障の一体改革」の延長線上にある。
持続可能な社会保障制度を考えるうえで,社会保障制度の見直しと同時に増税もやむなし,という考え方である。
したがって,社会保障制度の見直しも含まれている。
パートタイム労働者への厚生年金適用もそうだし,子育て支援もそうである。
しかし,当時の与党民主党が主張していた「基礎年金の税方式への転換」は,ネジレ国会のなかでは参院多数の自民,公明両党の理解を得られず,社会保障改革国民会議の課題に先送りされた(事実上棚晒しにされたとも言える)。
第3号被保険者廃止も三党合意には盛られなかった。
第3号被保険者制度は勤め人である第2号被保険者の専業主婦に保険料を課さない制度であるが,自営業等1号被保険者の専業主婦は対象外である(保険料を課されている)。
また,65歳以上の第3号被保険者に支払われる基礎年金の財源は,半分が税金,残り半分が保険料であるが,別に彼女(彼)の配偶者が2名分支払ったわけではない。現役世代の第2号被保険者の保険料である。後者には,独身男女性もいれば,兼業主婦もいる。働く男女性が全員で第2号被保険者の専業主婦の年金を支えているのである。
二重に不平等であると同時に,社会保険上の専業主婦の要件である給与所得130万円を限度に就労調整が起きているなど女性自身の就労決定に対して中立的ではないという問題もある(配偶者控除は給与所得103万円で同様のことが起きている)。
自民党は公約で「配偶者控除の維持」を掲げていたし,
もともと支持者には女性は家庭にという古い社会観念を抱いている人が多い。
安倍首相の「女性の社会進出」もお題目かなと思われていたところに,配偶者控除や第3号被保険者制度の見直しである。率直に言って,驚いた。
勘ぐれば,アベノミクスの息切れがある。
「第1の矢」大胆な金融緩和は一定効を奏して,為替相場が円安にシフトし,株価日経平均も2012年暮れから翌13年春まで急上昇した。しかし,米FRBが量的金融緩和QE3縮小予測を表明した昨秋以降,為替相場も株式相場も上下動が続いている。
「第2の矢」公共事業増発も功を奏していた。むしろ効き過ぎて,土木関連の資材や人手の不足を引き起こし,復興事業の入札不調が続いてくらいである。
しかし,「第3の矢」成長戦略は昨年5月以来,断続的に発表されても,市場にはインパクトを与えていない。
安倍首相がダボス会議等で「私のドリルで砕けない岩盤規制はない」と宣言しても,なんら具体的進展はなく(国家戦略特区くらいか),むしろ規制を崩す意思はないと看做されてきた。
矢折れ気味の成長戦略に残っていたのが,法人税減税と女性の社会進出支援である。
法人税減税は,官房長官が「15年度実施」を表明しているが,自民党内の調整を後回しのようであり,14年度予算案成立に伴う首相記者会見の質疑応答でも口を濁していた。
配偶者控除や第3号被保険者制度の廃止も同様で,産業競争力会議で議論され,同記者会見では首相自身が「6月には成長戦略を一段と強化します。女性の活躍を阻むあらゆる壁を突き破らねばなりません。女性の就労を後押ししてまいります」と表明してはいるが,与党内は先の公約との調整に途惑っているようであり,野田毅自民党税制調査会会長は,税制改正大綱を決定する「年末に判断する」と党内会合の講演で語った,と報道されている(日経,朝日)。
しかし,経緯はどうであれ,労働力人口の減少,国内市場の縮小が懸念され,円安でも企業の海外直接投資志向が収まらない状況のなかで「女性の就労拡大」の阻害要因の見直しは重要であろう。もっと注目されて良い。
3月19日 山形仙台圏交流研究会第65回定例会。来年度の事業系価格について。昼休み山大職組昼食会。退職者・転出者の送別。その後,定例教授会。
3月20日 第10回基盤教育授業評価改善委員会。
3月21日 ドトールコーヒー,自宅,ジム通い挟んでドトールコーヒー。研究会報告の準備。
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