いよいよ次稿に着手する。
その着想は「この1ヵ月」で述べたようなことだ。
9月の,学会問題別分科会で問題提起のあったように,搾取の説明が「マルクスの基本定理」で済まされるという理解が広まっている折,価値論の意義が問われている。
分科会報告では,資本主義的搾取の説明には資本循環(価値の姿態変換)に則した価値増殖の説明が不可欠と説いたのだが,それを最近の価値論の動向から改めて説いてみたい。
現在,価値論ではいくつかの新しい論調,傾向が見られる。
一々説明すると長くなる,論文になってしまうので,スローガン風にまとめると,
- 価値の価格化
生産論が社会的生産視角で説かれるようになり,剰余価値の増大の項から特別剰余価値規定が消え,代わりに競争論,機構論における市場価値論で示される超過利潤概念に新生産方法普及の役割が与えられるようになった。 - 価格の価値化
「生産過程の確定性」「流通過程の不確定性」を価値形成の基準とする立場から流通費用の費用価格(コスト)への不計上が主張されることが一般的になった。 - 価値論展開における生産論の希釈化
1.から派生して,生産論では労働,生産の考察に止め,価値論を展開しない傾向が現れてきた。他方で,価値水準の安定を社会的生産を絡めずに商品の価値規定から直接導出する論調も出てきた。
これらの論調の淵源を辿ると,以前の論考にもその萌芽を認めることができるが,少なくとも価値論の射程を整理しなければ,「主流派経済学と対峙する」という意図に「マル経を組み立てる」試みもその成果は覚束ないであろう。
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