10日くらい前に,「円安=原料高と株安の恐れ」などと記した記憶があるが(最近は更新がのびのびなので覚えていない),
この間,10月31日(土)黒田日銀総裁の追加的金融緩和発表と軌を一にして株価が急上昇した。
しかし,量的金融緩和だけでは,景気回復し金融緩和を終了して次は利上げへと向かうアメリカとの金利差拡大予想から,
円安の進展が予想されるだけであり,株高までは結びつかない。(現にアメリカはドル高株高だ)
円安で輸出企業が利益を増やし,海外に移転した工場が戻ると予想されもしたが,
既に円安の負の側面が方々から指摘されている。
中小企業の集まり日商の三村明夫会頭ばかりでなく,
大企業の集まり日本経団連の榊原定征会長も既に行き過ぎた円安との懸念を示している。
最近の株価上昇は,黒田総裁の追加的金融緩和発表だけでなく,その前日,10月30日(金)にGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が運用基準を改めて株式の比率を倍増させという事情が絡んでいることには留意が必要だ。
約130兆円の公的年金を運用するGPIFの運用資金は莫大なのでその株価引き上げ効果も大きい。
しかし,このような力尽くの株価引き上げ策は長く続くとは限らない。
GPIFの株式運用比率増大には,株価が下落すれば,国民の将来の年金原資を大きく損なうため批判も多い(「公的年金運用、リスク資産増に批判 厚労省作業班が初会合」日経14/11/4)。
また,政治の介入は政権の都合でスタンスが変わるため,健全な投資家が日本市場から逃避する可能性もある(「日銀緩和、強まる官製相場 15年末に国債の3割保有へ」日経14/11/4,「株式運用、物価上昇に備え 年金見直し、「政治介入」批判も」朝日11/1付け)。
首相の執務室には株価を示すボードが設定されており,株価がリアルタイムで把握できる,歴代政権初の試み,という。
内閣支持率に直結する日経平均株価や消費税増税の環境整備としての株価の引き上げ,という短絡思考でなければ幸いである。