更新が大幅に遅れた。
学会報告を文章化することに難渋した。
報告本文は9月中旬に提出していたし,そこでは詰め切れなかったこと,主に第3節も報告直前の1,2週間でかなりの程度練り上げた,と思っていたが,いざ文章にするとそう簡単には行かなかった。その他,報告後に回していた学務のことなどが降りかかって。。。
その後も学務中心だった。1風邪で発熱風邪で発熱はなくても咳が止まらず2,3日静養せざるをえなかったという計算違いもありつつ,ようやく昨日3つ目目の採点を終えた。
しばし時間ができたので改めて今後の研究を考えてみた。
これまで発表した研究とは無関係,唐突に見えるかも知れないが,最近の関心を端的に表現すると,「貧困の所在」ということになる。
これも最近ずっと頭をもたげていた問題でありながら,現時点ではまだ簡明には示せないので,箇条書きにしてみる。(ここまで記して3日経った。当たり前で,まだ詰めてもいないことを説明しようとするから足踏みして進まない。そこで無責任だが,終わりがない。現在の関心を結論風に示す)
- 現在,格差拡大とともに「貧困層の拡大」が喧伝されているが,内実は一様ではなく,資本・賃労働関係に起因するのは独身非正規雇用,特に女性が中心ではないか。
炊き出し参加者増は単なる賃上げでは解消し得ない。丁寧な就労支援が必要。「下流老人」も年金等,社会保障の制度設計の問題。橋本健二早大教授のしてきされる「アンダークラス」とはパート主婦,学生バイトを除いた1千万人弱の非正規雇用であるが,うち高齢者は年金収入があり,貧困率は低い。59歳以下の非正規雇用も,女性の貧困率の方が著しく高い。 - 橋本氏は新中間階級(男性事務職,女性管理職が含まれる),労働者階級(男性ブルーカラー+平の女性事務職)を「貧困とは無縁」と位置付けられているが,では彼らはどこに問題を抱えていないのか。
もちろん,働き方に裁量性が乏しいこともその1つであろうが,やはり「貧困」とは言えなくても,分配問題はあるであろう。それが大きな声にならない(もちろん労組は賃上げを第一に考えてはいるだろう)のは,彼らが収入を世帯単位で捉えているからではないか。 - 最初の女性単身非正規雇用の貧困も上の問題が根柢にあるのではないか。
後藤道夫都留文科大学名誉教授は1990年代末の日本経済における大量リストラを背景に,90年代後半までのワーキングプアが日本型雇用とは無縁で生活保護と労働市場の間を行き来する存在であったのに対し,「日本型雇用の解体」によって生じたのが「現代のワーキングプア」と指摘された。しかし,その後の景気回復に合わせて,その対象を賃金が年功的でなくなったブルーカラー職業群に限定された。後藤氏は元々「日本型雇用」のメルクマールを新規一括採用,長期勤続,年功序列型賃金の3点に求められていたため,その解体論を事実上撤回することになった。
ところで,日本型雇用の他の側面に「男性片働き型モデル」がある。女性は一般職として入職しても結婚退社し,その後は家計補助的パートに止まるものと想定されていたは家計補助を目的とする就労は,「年収の壁」を意識して「就業調整」する存在であり,「安い労働力」として重宝されることを受け容れてきた面がある。当人たちも,配偶者の年金賃金と併せた世帯収入で考えると,「貧困とは無縁」の生活であったからであろう。
しかし,女性の社会進出の進展や若年層の未婚化,晩婚化の進展を考えると,世帯賃金が妥当性を有するとは思えない。 - つまり,「現代のワーキングプア」は日本型雇用が解体したからではなく,ワークライフの変化にも関わらず,未だ解体していないからこそ発生したのである。