2024年5月26日日曜日

学生の質問(労働と生産)

 種々の理由で更新が遅れている。
 話題を変えてみる。


 4月24日の経済原論1は「労働と生産」。
  資本主義的と限定する以前の,人間社会に普遍的な労働過程,生産過程を解説。
  労働過程論で人間労働の主体性を説き,生産過程論で目的である生産物視点で過程の連鎖が規律され,定量性,効率性が生じると解説。
  後者はテキストの解説とという独自の考えので難しかっただろう。
  毎回確認問題の解答と質問,感想をオンライン入力させているが,学生の感想は必ずしも講義内容を踏まえたものではない 。

1)現在の日本は、賃金は上昇しないのにも関わらず、物価は高騰しているため国民の生活を圧迫してる。国民の経済活動を活発にし経済発展させるためには、賃金を上げることがとても重要だと思った。

--講義中は質問されていないことまで話しすぎました。
 労働は主体的な人間固有の行為ですから,賃金上昇しても物価上昇を下回る扱いは異常です。
 名目賃金の上昇率から物価の上昇率を割り引いた「実質賃金」は,年度で言えば23年度は前年度比2年連続マイナス(厚労省5/23発表),月別では3月まで24か月連続マイナス(同5/9発表)。小売業が増益のように原材料費の価格転嫁は進んでいるのですが,賃金上昇が追いついていません。
 授業で言ったのは,利潤が上がっても内部留保だけ積み増し賃金上げしない状況が続いたので,賃金上昇のみ遅れているように見えますが,賃金+剰余価値の合計であるGDPの伸び,経済成長率が低い状態が続いているのが日本経済の問題です。さらにその底に日本=人口減少=国内市場縮小という意識の存在です。利益があがっても海外への再投資に傾斜いるようです。
 (補足)内部留保が国内より海外投資に向かって,日本経済の成長率が低いなかでは進む憎い。経済成長は環境に負荷を掛ける面があるが,低成長のままでは分配,分配を通した生活の向上に限界がある。もちろん環境に配慮して生活の質を見直す必要はあるが,人々の「豊かな」生活への要求を無下に否定できない。

2)職人が生産に必要な技術を習得するまでの時間は抽象的人間労働に含まれるのでしょうか?

ーー技術習得が労働時間内であれば,労働には必ず2側面あるので,抽象的人間労働の面と具体的有用労働の面があります。 
 1日ないし1か月の労働時間の一部を割いて職業訓練を受けている面では,他の工場労働,オフィスワークと同様の抽象的人間労働です。しかし,その内容が実地訓練だったり,ソフト上のシミュレーションだったり,あるいは普段の仕事に就きながら先輩から指導を受けたり(OJT),本社あるいは箱根保養所の会議室に集められての研修(offJT)だったりと具体的有用労働の面ではさまざまです。
 勤務中ではなく,みなさんのように学校での勉強,訓練は労働ではないので,抽象的人間労働でも具体的有用労働でもありません。
 現実に訓練で問題になるのは,教育と称した休日出勤であったり,修業中と称して最低賃金を下回る報酬しか得られなかったりすることです。

0 件のコメント:

コメントを投稿